広岡宙と新たなラケット開発の取り組みが始まったのは約1年半前。F SPEEDのベースとなるサンプルラケットの試打を何度も繰り返し、要望を伝えた。ダブルスでも、シングルスでも強さを発揮したい。広岡は、現在使用しているラケットの良さを残しつつ、ストローク面での進化を熱望した。

前衛ラケットに、広岡が求める要素をどう反映させていくのか。いろいろな素材の種類や割合を変えることを繰り返して、何度も広島に足を運び、テストを重ね、広岡が求めるラケットを目指した。
「最初は当時のSCUD PRO-Rが使いやすいなと思いましたが、少しでも改善したい点があるのかどうかと聞いていただき、ストロークの時に硬さがあればいいという内容を伝えたのを覚えています。社会人になりシングルスで成績が残せるようになってから、よりストロークを強化したいと思っていましたから。柔らかいとコートに収まらないこともあるので、徐々に硬くしていただき、サンプルに対してこっちがいいなどとフィードバックしていきました。
あとは国内大会ではダブルスがメインなので、ストロークの硬さもありながら、ボレーの弾きは残したかった部分です。その面では少し柔らかさもあり打ちやすいと感じました。何本も打って、最終的に完成したのがF SPEED V-PROです」

長江光一は、足を手術したことをきっかけに、SCUD 01-Rに出合い、そしてF SPEEDにたどり着いた。
「第一印象はSCUD 01-Rと別物だと感じました。2回目の試打でたくさん打ちましたが、かなりいいな、と。違いは硬くなったことで狙ったところに飛んでくれて、反発力が出てきた。いい意味での硬さがありました」

近年はラケットに対する希望にも変化が生まれている。
「ケガの後、通常なら出せる1歩がいかなく、手だけで操作していると感じていました。しばらくは楽にボールを飛ばしたいなと考えるようになり、SCUD 01-Rのような柔らかさがあり、楽に飛ぶラケットが希望でした。まずは安定したプレーを取り戻すことが先決。その後、足が完治して、しっかりとボールをヒッティングしていきたいという気持ちが出てきました。今も目指すのは堅実、安定性があるプレー。その上で爆発力もあればいいですが、まずは土台の部分を大事にしたいなと思います。
今回のF SPEEDはSCUD 01-Rの形状を踏襲しているので違和感なく、持った感覚がよくて、スムーズに移行できました。SCUD 01-Rをベースに弾きが良くなったというイメージです。安定性に少し攻撃力がついたと言えば分かりやすいでしょうか。

試合中、練習中はプレーに集中するために、ラケットのことは一切考えません。今はラケットに対して何も考えずにプレーできているのが、良い証拠です。自分の身体とラケットがマッチしています。しかも、狙った時に攻撃的なプレーができるのがF SPEED。信頼はあります」

三重国体の代替大会、とこわか大会2021で2人は新作ラケット「F SPEED」で勝負した。結果は広岡宙がシングルスで4戦全勝、長江は丸中大明とのペアで2勝と優勝に貢献した。

特に、広岡は希望だったストローク面を確認するのに絶好の機会だった。
「今のモデルで打ち始めたのはミニ国体。その時にまず感じたのは、硬さが上がり、しっかりとコントロールもしやすくなったということです。力強いボールも思ったように飛んでくれました。代替大会もその流れで使えました」

現代のソフトテニスは多様化して、後衛もボレーをしたり、ベースラインでのプレーが優れる前衛が活躍したりする。F SPEEDの前衛用ラケットは、中間ポジションのローボレーやストロークなどのスイング系のプレーも意識した形状でありながら、ネット近くでの安定感も兼ね備える。今の時代に対応した進化が新たな個性となっている。

最後に2人にそれぞれのラケットのおススメポイントを聞いた。

F SPEED V-01を使用する長江は、「安定したプレー、ミスをしたくない選手に使ってほしいですね。それをベースに攻撃力もあるので、そういうプレーヤーにおススメです」

F SPEED V-PROで勝負する広岡は、「安定したテニスも必要ですが、力強いボールも打ちたいので、少し硬い印象ですが、力を入れなくてもボールは飛ぶのと、コントロールをしやすい。身体が成長する高校生には使いやすいのではないのでしょうか」

自分たちの思いを実現した最新作「F SPEED」。戦う準備は整った。