人に決められたからではなく、『自分のために』泳ぐ楽しさ
競泳選手
渡辺 一平 Ippei Watanabe(TOYOTA)
2017年に200メートル平泳ぎで2分6秒67の世界記録(当時)をマークした渡辺一平選手が頭角を現したのは、高校時代。3年生だった2014年の南京ユース大会は、200メートル平泳ぎで金メダルを獲得しました。早稲田大学2年生だった2016年には、リオ大会に出場。17年には世界新記録を出し、19年の世界選手権で銅メダルと世界大会で安定した活躍を見せています。しかし、幼少期は思うような結果が出ず、将来を諦めていました。
「中学生までは、全国大会では決勝に残れませんでした。タイムも日本一の選手とは7秒くらいの大差。どれだけがんばっても結果を出せない。全員が夢をかなえられるわけじゃないから、僕はかなえられない方の人なんだと諦めかけていました」
厳しい練習をこなしても結果が出ず、両親やコーチの期待も重荷に感じるほど、渡辺選手にとって水泳が大きな苦しみになっていました。しかし、水泳を辞めると決めたタイミングで考え方が大きく変わりました。
「中学までは、両親やコーチにやらされている感覚で、成績も伸びず、水泳も嫌いになっていました。中学3年生のとき、両親が出場を期待していた山口国体に出て、そこで水泳を辞めようと思っていました。でも、国体の帰り道に亡くなってしまった友人が僕について「世界大会で活躍してほしい」と話していたということを聞きました。その言葉を実現するために、これからは『自分のために』泳ごうと決めました。厳しい練習でも、誰かにやれと言われたからではなく、自分が強くなるためにやろうと思うと水泳が楽しくなりました。そこから急激に記録が伸び始めました。スポーツを『やらされている』感覚の人はたくさんいると思いますが、少し考え方を変えると、楽しいという感覚が生まれ、結果も出していけると思います」
目標から逆算して、段階的な目標と課題を自分で考えて、仲間と楽しく練習する中でやり遂げる。コーチが決めたのではなく、自分が必要だと思った練習に取り組むことで、トレーニングの効果が大きくなりました。