選手の『声』がシューズづくりの羅針盤となり、
力になる
ラケットスポーツシューズ企画担当
大谷 和 Kazumi Otani(ミズノ)
フットウエアプロダクト本部の大谷和は、卓球とボクシングのシューズ企画を担当しています。中でも卓球シューズでは、卓球女子日本代表選手である伊藤美誠選手が着用する『ウエーブメダルSP4』と平野美宇選手が着用する『ウエーブメダル6』の両方を担当しました。
「ウエーブメダルSP4は、ミリ単位の締め付け調整ができるダイヤル式のフィットシステム『ボアフィットシステム』に加えて、新素材のMIZUNO ENERZYを新たに搭載しています。MIZUNO ENERZYの搭載位置は、サンプル制作を重ねながら、すでにMIZUNO ENERZY搭載シューズを開発したバレーボールやバドミントンなどの企画担当者とも連携し、ベストな搭載位置を探しました」
ウエーブメダルSP4は、ボアフィットシステムによる着脱の容易さから一般のシニア選手にも人気なのだとか。
「靴紐の代わりにダイヤルを回すだけで、ミリ単位の締め付け調整ができるボアフィットシステムは、その特徴からサッと履けてサッと脱ぐことができます。着脱のしやすさを求めるユーザーニーズに応えるため、素材の使い方や履き口の形状も工夫しました。」
ウエーブメダル6はグローバルで人気のシューズだけに、世界中のニーズをどう反映するかに頭を悩ませたといいます。
「アッパーを構成する人工皮革とメッシュのバランスが難しかったですね。メッシュを増やすと軽さや履き心地の良さを実現しますし、人工皮革を増やすと安定感や横ブレ防止につながります。足を守るイメージを持たれているウエーブメダル6だけに、メッシュと人工皮革の位置やバランスの決定は、最後まで難航しましたね」
ウエーブメダルSP4では新素材の位置、ウエーブメダル6では人工皮革とメッシュのバランスという難題をクリアするカギは「ヒアリングにありました」と大谷。
「どちらのシューズもさまざまな世代の方に履いていただくことを想定しているので、トップ選手や学生からシニアまで幅広い層の選手にヒアリングをしました。特にウエーブメダルSP4に関しては、MIZUNO ENERZYを搭載することもあり、これまでにない数の『声』を参考にさせていただきました」
ただ、数が増えるほど正反対の『声』も出てきて、取捨選択の必要が出てきます。その壁をクリアしたのは地道な試行錯誤でした。
「社内のチームでそれぞれの『声』が出た理由を分析して新たな仮説を立て、新素材を配置する場所などを少し変えてサンプルを作り、それを履いた『声』を再び集めて仮説を検証する。これを私が『これだ!』と確信できるまでひたすら繰り返しました」
ただ、際限なく仮説と検証を繰り返し続けられないのも事実です。
「スケジュールや予算など超えられない一線はあるので、その範囲内のギリギリまで諦めずに粘って、粘って、粘りきります。そのシューズのことを一番知っている私が、自信を持って『これは世に出せる!』と言えるものを提供しないと、履いてくれる選手たち、そして関わる様々なスタッフの皆さんに失礼ですから。今回も、自信が持てるまで諦めず、本当のギリギリまで粘りました(笑)」
大谷自身は、卓球シューズの企画開発を通じて、卓球人口の拡大に貢献できればと考えています。
「卓球の競技人口は、サッカーや野球に比べるとまだ少ない。子どもたちの『卓球をやりたい!』という気持ちを後押しするシューズを作りたいですね。また、一般の選手にもシューズを通じて驚きを感じたり、パフォーマンスの向上を実感してもらいたい。『ミズノのシューズだから勝てた』と喜んでいただける、そんなシューズを追求し続けます」