失敗を恐れない探求心を武器に、ロコ・ソラーレらしい勝利をつかみ取る

日本女子カーリングチーム『ロコ・ソラーレ』は、2017年の平昌で3位に輝くなど、日本女子カーリング界を引っ張る存在です。今回は、チームメンバーの皆さんに、これまで乗り越えてきた高い壁や戦うモチベーションなどについて語り合っていただきました。

全員で常に考え、意見を出し合い、できることをやり続ける

――チームとして最高のパフォーマンスを発揮するために大切にしていることや意識していることはありますか。

藤澤 : 『ロコ・ソラーレ』では、メンバーの年齢が近いこともあり、各メンバーが平等に意見を言い合えるチームであるように、全員が心掛けています。リーダーが「私に付いてきて!」とやる感じではないですね。

吉田知 : いつも何らかの問題は絶対に発生するので、その時に『誰かのせい』ではなく、メンバーそれぞれが「自分に何ができたのか?」という部分に話がちゃんと行くところですね。勝ち負けが明確でシビアな世界なんですけど、勝ち負けよりも「自分ごと」として課題に向き合うことの大切さを、このチームで学びました。

吉田夕 : 「考えることをやめない」ってことかな。練習中も、これが何のための練習で皆が何を考えているのか、自分は何を考えてこのショットを投げるのか…いつも何かを考えています。考えることを止めないようにしていますね、このチームは。

――もしそれぞれの意見が違っている時はどうしていますか。

吉田知 : それぞれが持っている意見は全部正解で、時と場合によってどれをチョイスするかなんです。練習中で時間がある時は全部試してみて、その中でチームに一番しっくりきたものはどれかを話し合います。そして試合中に似たような場面が出てきたら「そういえばあの練習の時にこうだったね」というコミュニケーションや、投げ手、フィーリング、試合の空気感で決めていますね。

――試合以外の部分でもチーム内での役割分担があると思うのですが、それぞれどんな役割の担当ですか。

吉田夕 : 私はスケジュール担当です。大会や試合の時間から逆算して、起きてから試合に向かうまでの時間を分刻みで決めます。もちろん決めたらみんな守ってくれますね。たま~に、私を含めて全員で勘違いしていることはあるんですけど(笑)

鈴木 : ひとつはチームの支出関連を含めたお金の管理です。たまにお金がカバンの奥底にあって『どこに入れた?』とハラハラすることは結構あります。あとは練習場所となるアイスの予約確保も。

吉田知 : 私は英語と料理の担当かな。合宿や遠征でキッチン付きの一戸建てに滞在する時は、気分転換にみんなの分を料理して食べてもらいます。

藤澤 : ユニフォームやトレーニングウエアをミズノにお願いしたり、到着日程を確認する担当です。

吉田知 : あとケアやインタビューの窓口とかもだね。

藤澤 : それもだ!今まで(本橋)麻里ちゃんがやってくれていた部分を引き継いでいますが、みんなに助けられている部分が多いです(笑)

吉田知 : あと、小野寺監督の子守りは?

一同 : それも!(笑)

結果以上に『やりたいことができたかどうか』が大切

――今まで立ちはだかった壁の中で、特に記憶に残る高い壁はありましたか。

藤澤 : 平昌前にスイーパーの二人が同時にケガをしてしまった時ですね。試合が立て続けに開催される中、ケガを押して試合に出ていました。でも、ケガでスイープは無理なので、ウェートジャッジをメインにしてもらって、ケガしてない二人がスイープに回ったり…。平昌前はケガをしていることも知られないようにやっていたので。

吉田知 : 私は世界選手権で銀メダルを獲った翌シーズンとなる2017-18シーズンかな。2015年にずっとライバルだったさっちゃん(藤澤選手)がこのチームに来てくれました。最初は勢いで勝ち進んだものの、2016-17シーズンに世界選手権で日本初の銀メダルを獲得して以降、相手にマークされてなかなか勝てなくなったんです。それに加えて「負けちゃいけない」というプレッシャーを自分自身に勝手にかけていたこともあって、シーズン終盤はどん底でした。そんな時にミーティングでJDコーチから「僕が君たちを信じるように、君たちも自分の力を信じてほしい」というひと言で目が覚めた。今振り返ると、あの勝てない時期があったから平昌の出場権が取れたんじゃないか、と。

――メンタル面に変化はありましたか。

吉田知 : 2017年2月の全日本選手権で負けたことで、ずっと追われる立場だったのが、挑戦者の気持ちになれました。以来、チームでよく話し合うようになりましたね。

鈴木 : 世界選手権で銀メダルを獲った時は、本当に全部うまくいっていた時期だったので、逆にわずかな負けで異常に落ち込んだりしていました。別に勝たなくても良い夏の試合でも負けて泣いたりしてたね。

一同 : みんなでワンワン泣いたよね~(笑)

藤澤 : 世界選手権の銀メダリストは勝って当たり前だと、自分自身で勝手にプレッシャーをかけていました。周囲の皆さんからの期待をプレッシャーとして受け止めてしまっていたんだよね。

――高い壁を乗り越えられたモチベーションは何でしたか。

吉田知 : 世界トップレベルのカーリングチームは『勝つこと』と同じぐらい『自分たちらしいパフォーマンスをすること』を大切にしているんです。それを知って以来、『ゲームに勝つこと』と同じぐらい『私たちらしさを表現すること』がモチベーションになりました。

藤澤 : 自分たちらしいプレーやスタイルを求めて、いろいろな挑戦をしてきたことですね。例えば、自分たちの作戦を改めてゼロベースで練り直すべく、新しい作戦を試合中に試したりします。『世界一』をめざしている私たちにとっては、同じやり方を続けて結果を出すばかりでは進化できないからダメなんです。だから、思いつくこと全部に挑戦して全部失敗しても「やらなきゃ良かったな」とは思いません。「失敗することがわかって良かった」と、前向きな気持ちで受け止めます。そういうポジティブな考え方がモチベーションです。

鈴木 : 一つの勝ち負けに一喜一憂する時期を乗り越えたことで、結果よりも「何をしたいか」にフォーカスするようになったことが、モチベーションになっていますね。勝ってもやりたいことができなかった試合は反省会が長いし、逆に負けてもやりたいことができた試合なら、「負けたけどよくできてたね」という反省の仕方をするようになりました。

失敗を恐れない探究心が『ロコ・ソラーレらしさ』

――最後に、皆さんは『ロコ・ソラーレらしさ』とは何だとお考えですか。

藤澤 : 周囲の皆さんからは「楽しそうにプレーするチーム」と言われることが多くて、逆に「私たちって、そうなんだ」と気づかせてもらいました。ジュニアの選手が、私たちのプレーを見て「カーリングしている時って笑っても良いんだ」と言ってくれたそうなんです。私たちをきっかけに、新しいカーリングのスタイルが生まれつつあるのは嬉しいですね。

吉田知 : カーリングは、接触しなくてもアドレナリンが出てしまうぐらい戦略性が高くて精神的負担が大きく、自分自身をコントロールするのが難しいスポーツなんです。男子選手の中には、怒りや叫び声でコントロールする選手もいます。私たちは、たまたま『楽しさや喜び』を表現することでコントロールするのが合っていたんです。

鈴木 : 私たちが出てくるまでは、楽しそうに笑顔でカーリングをプレーする姿って、あまり良いイメージがなかったかもしれません。だから、笑顔でも勝てるチームが存在することを証明するためにも、勝ち続けることが重要だと思っています。

吉田夕 : みんなカーリングに対して真面目で、「なぜ?」という気持ちが生まれたら突き詰めて解明しないと気が済まないんです。しかも新しいことに挑戦する恐怖心がないんですよ。そんな探究心が『ロコ・ソラーレらしさ』なのかもしれません。

REACH BEYOND PHILOSOPHY

――最高のパフォーマンスを発揮するため、大切にしている身の回りのものは何ですか。

吉田知 : 平昌出場が決まってから、祖母が「頑張ってきてね」とお小遣いをくれたんですよ。「まだ行かないよ」と言っても、家に遊びに来るたびに何回も(笑)。普通に使うのももったいなくて、せっかくだから平昌に持って行ける物をと考えて、ピアスを買いました。今も大事に身につけています。

吉田夕 : 飼っているネコ3匹ですね。姉が実家を出た頃に両親が捨てネコを拾ってきたのが始まり。私が実家を出るタイミングで2匹目が来て、妹が大学入学でひとり暮らしを始めるタイミングで3匹目が。今、それがなぜか全員私の家にいて、もう家の中が大混雑(笑)。でも、見てるだけで癒やされる大切な存在です。

鈴木 : 自分で焼いたクッキーですね。私自身クッキーが大好きで、焼いてみんなに配布したり。実は、自分が食べたいからなんですけど。あと毎年1回JD(コーチ)の似顔絵クッキーを焼くのが、毎年恒例のお約束(笑)

藤澤 : 平昌の直前、家族全員がお金を出し合ってプレゼントしてくれたネックレスですね。シルバーとゴールドの2種類あったそうですが、獲ってほしいメダルの色に合わせてゴールドを選んでくれたんです。平昌ではずっと身につけてプレーしていて、今もずっと身につけてます。