かあいがもん、チェアリングをしてみる。椅子さえあれば楽しめるチェアリングの魅力

文・かあいがもん

チェアリングをやってみた。かあいがもん

※取材は、新型コロナウイルス感染対策を講じた上で実施しました

気温もちょうど良くなって絶好のお出かけ日和になってきたというのに、まだ世間は新型コロナの影響で普段通り気ままにお出かけしてもオッケーというムードではなさそうだ。

以前の私は休みの日にはぷらりと旅に出たりしていたが、家にいることが多くなったせいか自分の世界がどんどん小さくなってきているように感じる。

ソーシャルゲームに課金をしたりNetflixのドラマを片っぱしからみたりノリで息子とYouTubeを始めてみたりと、自粛生活もなかなか充実して送っているなと思っていたのだけれども、長くなるとそれもだんだん楽しめなくなってきた。

このままこの状態が続いてしまうと私の頭がどうにかなってしまいそうだ。何か良い気分転換はないだろうか。

と、そんな事を思っていたら

チェアリングをしてみませんか?」というお誘いが来た。

チェアリング? チェア? リング? 聞きなじみのない言葉だ。

新しい椅子取りゲームか何かか? と思って調べてみたら「携帯できる椅子を持って出掛け、好みの場所で好みの過ごし方をすること」だそうだ。そして非日常感を味わえるらしい。

なんだか楽しそうな感じではある。

しかし、しかしだ。若者やカップルならまだしも、46歳のオッサンが公園などで昼下がりに折り畳みの椅子に座っていたら不審者に見えないか? 家に居場所がないお父さんみたいに思われないか? ピクニックとは違うのか? そもそも椅子に座るだけで非日常感なんて味わえるのか?

いろいろと疑問が出てくる。ただ数々の疑問以上に、今の私はとても気分転換をしたい気持ちでいっぱいだ。

というわけで、早速チェアリングに出向くことにした。

椅子さえあれば。チェアリングは手軽で気軽なアクティビティ

待ち合わせは東京都杉並区にある和田堀公園。

大きめな池のある静かな公園。

私を誘ってくれたのは「チェアリングの始祖」であるパリッコさん。2016年ぐらいからチェアリングをしているそう。ただのお酒が好きな人と思っていたが、いつのまにかこんなことを始めているなんてビックリだ。

パリッコ……ライター。1978年東京生まれ。酒好きが高じ、2000年代後半よりお酒と酒場に関する記事の執筆を始める。著書・共著多数。漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメイカーとしても活動中。ライター・スズキナオさんとともに始めた「チェアリング」が近年、注目を集めている。
https://twitter.com/paricco

以前お会いした時よりなんだか風格があるような……。
チェアリングをする前に、まずは私の疑問をぶつけてみたいと思う。

「チェアリングとはどう楽しめばよいものなのですか?」

パリッコ「僕のチェアリングのモットーは手軽で気軽。椅子さえあればの感覚ですね。やり過ぎるとピクニックやキャンプになってしまうので、飲み物やつまみなども現地でサッと調達して頑張らないのが基本。思い立ったらすぐできるのがチェアリングの良さですね」

「なるほど。ピクニックに行こう! となると、食べ物や持ち物を準備しなくちゃいけなくなって面倒臭いですもんね」

パリッコ「何も予定がない日も、椅子を持ってコンビニに寄って、あとは公園などで過ごすだけで今日はチェアリングをした、と少しだけ特別な日になるんです。誰かを誘わなくても、1人でサッとできるのが魅力ですね」

「アウトドアチェアなど、携帯できる椅子ってちょっとかさばると思うんですが、公園のベンチやレジャーシートではダメなんですか?」

パリッコ「ベンチとアウトドアチェアでは、まず座り心地がぜんぜん異なるんです。ベンチだと数十分でお尻が痛くなることもありますが、アウトドアチェアなら1時間は余裕で座ってられます。あとは、自分で座る場所を決められるので、自分だけのスペースを見つけられる楽しさがあります。ベンチは動かせられませんから。
そういう意味ではレジャーシートもいいんですけど、風が強いと飛んでいったり、地面が近いのでお尻が冷たかったりしますし、荷物をシートの上にどんどん広げちゃうから気軽に移動しづらいんですよね」

「なるほど。とはいえ一人で椅子に座って陣取っていると不審者とかに思われそうで」

パリッコ「確かに、あまり狭い公園だと不審がられちゃうかも。チェアリングをするなら、ある程度の広さがあり、みんなが自由に過ごしているところがいいですね。
あとは周囲に迷惑をかけない、威圧感を与えないこともチェアリングの前提です。例えば公園でお酒を飲んでも法律等に違反しているわけではないですが、嫌悪感を抱く方はいます。人に迷惑をかけたり、嫌がられたりしてしまうと、結果として大好きなお酒の地位が下がってしまうので、こちらから積極的に気を使っています

と、パリッコさんはこちらを見せてくれた。

ハイボール缶が入った缶クーラー。本来は保冷のためのアイテムだが、パッケージを隠せるのでお酒を飲んでいても威圧感がなく、周囲に不審がられないそうだ。 百円均一などで売っている、ペットボトルカバーもおすすめらしい。

他にもパリッコさんの持ち物を見せてもらった。

百円均一などで売っている折り畳み式の収納小物(食器棚やシンク下などに置ける整理棚)を活用して、食べ物や飲み物を置くミニテーブルにしている。

パリッコ「地面に食べ物を置くのは少し抵抗があるけれど、わざわざテーブルを用意するのは大変なので、簡易なもので代用しています。あと、食べものはのり巻きやサンドイッチなど、片手で食べやすいものがおすすめです」

確かに手軽に用意できるし、気軽に食べられるものばかりだ。これらはこの数年、いろいろと試してみて落ち着いた形だそう。

他にも「少しやり過ぎかもしれませんが」と言いながら見せてくれたのがこちら。

背面部分に折りたたみの椅子が収納されているリュックだ。テーブルとしても使えそうだし、ドラマや映画のロケ撮影に持っていくと便利そう。チェアリングとは関係なく欲しい。

他にも「寒い日は折り畳みの座布団が1枚あると保温性が上がる」や、「夏場は蚊が本当につらいので虫除けは必須」など、さまざまな情報を教えてくれた。

座った場所が、だんだんと自分だけの心地良いスペースになっていく

それでは早速チェアリングを。

まずは場所選び。

「チェアリングする場所はどう探せば良いでしょう」

パリッコ「人に威圧感を与えないためには、近くに通り道がなく、人の動線から外れている場所が良いですね。すごく前とかすごく後ろで、中央は避けます。こういった木の下は、動線から外れつつ日陰にもなります」

「なるほど、木と寄り添うのは良さそうですね」

パリッコ「あと、水があると水面を眺める楽しさが味わえます」

という事で、私とパリッコさんは木が近くにある水面の見えるところに座る事にした。

よっこらしょ。

あれ?

あれ? なんだろう。

少し座っていたら不思議な感覚になった。

まず自分の座ってる場所が、自分だけの心地の良いスペースになった感じがする。なんていうかこれはベンチに座っているのとは違う感覚だ。公園にいるのに、公園とはまた違った景色に感じる。別に遠出をしたわけでもないのに。
これがチェアリングというものか……。なるほど非日常感を味わえるというのも分かる。

椅子を持って出かけるだけでこの気分が味わえるのは確かに良い感じだ。

よくよく考えてみたら、椅子を持って出掛けて好きな場所で過ごすというのはやっていそうでやったことがないな。

そして心地のよい時間が流れていく。

「パリッコさんはなんでチェアリングをしようと思ったのですか?」

パリッコ「最初は単なる“悪ふざけ”ですね。スズキナオさんと面白いお酒の飲み方を考えているときに、『あえて椅子を持ち運んで、お酒を飲んでみるのはどうか』と。
初めてのチェアリングは、普段は行かない場所をあえて選ぼうとお台場海浜公園の砂浜に座ってみたんです。そうしたらリゾート地にいるような気分になり、これはヤバいものを見つけてしまった、と。チェアリングという名称も、会話の流れで自然に出てきて」

「確かに座った瞬間、これは良いかもと感じました。今までで『ここは良かった』というチェアリングスポットはどこですか」

パリッコ「お台場海浜公園、葛西臨海公園、あと京都の鴨川は良かったですね。特に海辺は日本にいるとは思えない開放感が味わえます。奥多摩も、川べりに椅子をおいて足を浸けながら座れて良かったです」

「それは気持ちよさそうですねぇ。ちなみにチェアリングは1年中できるんですか?」

パリッコ「嫌だっていう人はいますが、僕はできますね」

「1人でできるものだから、自分がやりたいと思ったタイミングでできるのが良いですね」

パリッコ「「そうですね。あとは誰かと2人でチェアリングしていても、30分くらいお互い何もしゃべらない時間帯があったりして。それでも良いのがチェアリングかなと。どこに座ってもそこの良さがあり、どうやっても楽しいアクティビティだと思いますね」

ちなみに、今回私がチェアリングをするために持ってきたものはこちらなのだが

PCを開いて仕事でもしようと思ったのになんだかやる気がしなかった。他にも読書をしようかなと文庫本も持ってきたのだが、なんというか、この公園では私は何もしないのが心地良かった。気分転換のためのチェアリングなら、そんなに持ちものはいらないのかもしれない。

「チェアリングで楽しもうと思って用意したけど、これは違うなと感じたものはありますか?」

パリッコ「音楽プレーヤーですね。試しにかけてみたけれど、この空間に座って過ごす時間に音楽はいらないなと思いました」

確かに、自然の音がすでに素敵なBGMなので、音楽プレーヤーはいらない気がする。

さらに心地の良い時間が流れていく。

「パリッコさんのチェアリングの楽しみは何ですか?」

パリッコ「僕は波紋が好きなんです」

ジョジョ?」

パリッコ「ジョジョは好きですが、違います。水面がゆらゆらしている様子ってずーーーっと眺めていられるんです。そのうち、自分は何を見つめているんだろう……と、思考が変な領域に入っていくのが分かるんです」

パリッコ「カモが泳いでできた波紋は、石を投げてできる波紋とは違い天然ものでよいですね」

確かに、リラックスして水面をジッと見てるとなんだか違う世界に誘われる。モネの絵を見ているようだ。

パリッコ普通に生活していると、波紋や景色や自然の音って意識しないじゃないですか。そういうものに気付ける良さがチェアリングにあるんです」

日光が水面にあたり、反射して葉っぱがきらきらと光っている様子を、何もせずただぼーっと眺める。こういう体験こそチェアリングの醍醐味なのだろう。

私とパリッコさんは公園の別の場所に移動して、各々用意したものを口にしたり、雑談をしたりしながら、しばらくチェアリングを楽しんだ。

チェアリングは新型コロナをきっかけに、テレビ、雑誌、Webなどで取り上げられることが増え、SNSに投稿してくれる人もすごく増えたそうだ。

パリッコ「椅子を持って出掛ける、という行為自体はやったことがある人も多いと思います。その行為を『チェアリング』と名付けたことで“分かりやすく”なり、楽しんでくれる人が増えているのはとてもうれしいです。けれどすごくはやってメジャーになってほしいというよりは、各人が自由に楽しめる『余白』がある状態が良いですね」

撮影の合間にチェアリングをやってみた

そして後日。

私は1人でチェアリングをすることにした。

ドラマの撮影でしばらく京都に滞在していたので、鴨川へ行ってみた。

人がいなさそうな時間を狙って行ったので、ソーシャルなディスタンスも気にしなくて良さそうだ。

人の通りを避けた良さげな場所があったので、とりあえずそこに椅子を置いた。

京都に来ると、よく散歩でここを歩いてはいたけど、また違う景色に見える。
心地良い風が私の頬をなでてくれるのが気持ち良い。鴨川の流れを見ているだけでゆったりとした時間が流れてゆき、日常と非日常がモザイクのようになって変わっていく感覚すらある。

あぁ、この場所もまた最高だ。

前回はパリッコさんがいたから気軽にできたけど、1人でも心地良くできるのだろうか? と少し不安に思っていたが、それはいらぬ心配だった。

椅子を持って出掛けるだけという手軽さが良いのだろう。人が多くなったり、居心地が悪くなったり、ここは違うと思ったらすぐに移動できる気軽さがあるから1人でも「チェアリングをする」という気負いがいらないのだ。

改めてやってみて思ったのは、アウトドアチェアはディスカウントストアやネット通販で1,000円ぐらいから買えるが、頻繁にチェアリングを楽しむなら、少し高くても背もたれが付いてるものの方が長い時間ゆったりできると思う。しかし、あまり大きめのものになると手軽感がなくなるので、チェア選びは難しいところ。

晴れたり曇ったりと気温が変わりやすい日や少し風があるときは、ウインドブレーカーなど羽織るものがあると良い。

風がある日は食べ物のゴミが飛んでいってしまうので、気をつけた方が良い。

こんなところだろうか。

それにしても家にいる時間が長く疲れていたからだろうか、チェアリングに出掛けるだけでこんな気分転換を味わえるとは思いもしなかった。

確かにこれは気軽に手軽にできる、どうやっても楽しいアクティビティだと思う。

河相我聞(かあいがもん)

俳優。2人の息子を持つ父親でもあり、独自の子育てをつづるブログが話題を呼び2017年に書籍化。
ブログ:かあいがもん「お父さんの日記」

撮影(公園):関口佳代
編集制作:はてな編集部

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