最速で、未来へ。
プロサーファー川合 美乃里 Minori Kawai
プロサーファー川合 美乃里 Minori Kawai

最終目標はワールドチャンピオン

ダイナミックなライディングを見せるのは、プロサーファー川合美乃里選手。
サーフィンの世界ツアーには、ワールドチャンピオンシップツアー通称CTとワールドクオリファイシリーズ通称QSの2種類がある。
彼女が今戦っている舞台はQSというカテゴリー。
ポイントを積み上げ上位に入らなければ、17名のCTライダーにはなれない。
2017年、彼女は女子高生プロサーファーとして日本のサーフィン界に歴史を作った。
オリンピックサーフィン会場となる千葉県一宮で行われたQS3000、ここは彼女のホームビーチ。
毎日練習している海だけに、気合が入る。

1軌跡

優勝目指してがんばります。ありがとうございます

私たちは地元の海を知り尽くした彼女の快進撃を見ることとなる。
セミファイナルでは元CTライダーのディミティ・ストイル選手を打ち負かした。日本女子サーフィンの歴史を塗り替える瞬間に期待が膨らみ、川合選手を囲む報道陣が日に日に増える。

決勝戦。コンディションのよくない波の中確実に技を決め、川合選手は日本女子サーファー初となるQS3000の優勝に輝いた。多くのメディアが川合選手の快挙を大きく取り上げた。
同年、好成績が認められ「ジャパン・アクション・スポーツアソシエーション」よりサーファーオブザイヤーに選ばれた。

2幼少期

水に顔がつけられず海水が当たるだけで怒っていた

数多くの優勝を勝ち取ってきた川合選手。
幼少期の頃から海は好きだったのだろうか。

川合選手:「水に顔がつけられなくて、海水が顔に当たるだけでめっちゃ怒ってた。はぁ、みたいな。なんでサーフィン始めたって感じなんですけど。だからゴーグルをつけてやっていて。しかも始めたときが冬? めっちゃくちゃ寒いんですよ。徳島の海」

川合選手の父:「最初は抵抗がありましたね。顔を濡らすのも嫌そうだったので、ゴーグルをつけたりライフジャケットを着て海で練習していました。世界で通用するかは、当時明確にはわからなかったです。日本ではアマチュアの時からそこそこ上にいたから、国内では上位にいけるかなとは思っていました」

3シリーズ参戦

やっぱり一番最初に波にのらなきゃいけないなって

2017年10月 1日目

2017年10月、千葉県鴨川でシーズン終盤戦となるQS3000が始まった。
マスコミの注目を集める川合選手。周囲からの期待がうかがえる。
好調の川合選手はこの日順調にラウンド1、ラウンド2と勝ち進み、CTライダーとなるためには確実にポイントを稼ぎたい試合。

優勝候補と言われているハワイ出身のCTライダー ココ・ホー選手もポイント獲得のため、優勝を狙って日本までやってきた。今大会、川合選手の最大のライバルだ。日本でもファンの多い彼女の周りには自然と人だかりができる。そんな彼女も順調に駒を進めた。

2017年10月 2日目

大会2日目。川合選手のラウンド3が始まった。
川合選手とラウンド3で戦う相手はあのココ・ホー選手。4人で海に入り、上位2人しか次のラウンドには進めない。

最初に波を掴んだのはココ・ホー選手。
・ サーフィン競技にはプライオリティというルールがある。色分けされた選手にそれぞれ波に乗る順番が割り当てられ、選手は試合中誰に波の優先権があるのか確認できるようになっている。
プライオリティルールを使い、より高い得点を狙える波選びが勝敗を左右する。技は審査員によって点数がつけられ、ハイスコア2つの合計点を競い合うのだ。

序盤から積極的に波にトライするココ・ホー選手。徐々に他の選手を引き離していく。川合選手は離されまいと上手く波を掴む。他の選手も次々と波に乗り、白熱した試合展開へとなっていく。

2位につけた川合選手。逆転を狙った最後のライディング。惜しくも逆転ならず、2位でこのラウンドを終えた。

川合選手:「良い位置にはいたのに自分が沖の方にいて乗れなかったり、もっと波はくるかなと思ってたけど思ったよりこなくて、そこが敗因かなって。やっぱり一番最初に波にのらなきゃいけないなって思いました」

CTライダー同士の決勝となったファイナル。抜群のバランス力で波を乗りこなしていく。
この大会を制したのはココ・ホー選手。攻めの姿勢を貫いた結果だ。

4トラブル

何しに行ってんだって感じ

2018年夏 試合2日前

2018年夏。
日本から10時間のフライトを経て、ロサンゼルス国際空港に到着。今回はQS6000の試合がここ、アメリカ西海岸で行われる。

早速試合会場で波の状態を確かめる。今大会はQS6000ということもあり、CTライダーも数多く出場する。競合相手にどこまで通用するのか。

練習中、ひと際歓声が上がっている選手がいた。あの、ココ・ホー選手だ。オーバーヘッドサイズの波に乗りなれているだけあり、男性サーファーでも簡単ではない波を軽快に乗りこなしている。
川合選手の目標でもあるCTライダー。QS6000クラスの試合には、ココ・ホー選手のような強者が大勢いる。試合まで、あと2日。

試合前日

試合前日、川合選手にトラブル発生。
練習直後に膝の痛みを訴え、病院で診察を受けることに。

川合選手:「うーん……うん。靭帯伸ばしてたみたい。サーフィンはしちゃいけないって訳じゃないけど……とりあえずでも、今日夕方波乗らないで、どういう波がくるかわかればいいかな」

膝の靭帯を痛めてしまった川合選手。大切な試合を目前に大きな不安を抱えてしまった。果たして、出場できるのだろうか。

試合当日

そして迎えた試合当日。
川合選手はテーピングで膝を固定し試合に出場することを決めた。どこまでのパフォーマンスができるのか、ぶっつけ本番だ。

結果はR1敗退。

川合選手:「めっちゃ波良さそうで楽しみだったんだけどな。波が来てないものに対してなんじゃなくて、波があるものに対して乗れなかったから余計やばいですよね。何しに行ってんだって感じ」

決して膝のせいではないと、波に乗れなかった自分を責めた。

5今の自分

誰も次なんか見てない。今しか見てない

2018年秋、ISAワールドサーフィンゲームスの日本代表として出場するもラウンド2で敗退。結果の残せない試合が続いた。

川合選手:「あまり『次がんばります』とかは言わないようにしてます。だって今もがんばってるし、アスリートって本当に結果が一番。次じゃなくて今成績残さなきゃ意味がない。『誰も次なんか見てないし今しか見てないんだよ』っていうのは自分で結構思ってます。
もっと波に乗ってくださいってよく言われます。波に乗らないとサーフィンって始まらないんで……。技術の前に、波を読み取れる子が強いんだなって。
波選びが勝敗を分けるのかな?そう、だから乗れないんですよね。それ(波に乗る)しかないんですよね、今は。目の前の課題は」

アスリートは結果が全て。努力をしても結果を残さなければ報われない。
波選びが最大の課題と言う川合選手。悔しさが私たちにも伝わった。

川合選手の父:「ただ波に乗るだけでは意味がないから乗らないんですよね、多分。点数の出る波をキャッチしない限り乗りたくないと思います」

コーチ:「すごいネガティブ思想だと思いますよ。発言的にもいつも。かと言って試合でネガティブな感じのサーフィンではないんですよ。強気なんですよサーフィンは。逆にポジティブ過ぎて波に乗らないのかも。波が来る!来る!と思って。そのネガティブからポジティブのスイッチが海に入った時に変わるのかもしれないですね」

6これからの自分

それでも、サーフィンは楽しい

世界のレベルを体感した川合選手。勝ちにこだわる姿勢からトレーニングにも力が入る。
CT選手との違いはパワーだと即答した。世界の壁を超えるにはウエイトトレーニングが欠かせない。

「サーフィンは楽しいか?」
という問いに、「楽しい」とシンプルに答えてきた。

いつも良い時ばかりじゃない、とも話す彼女だが目の奥ではCTライダーになった姿を思い描いているに違いない。

頂点を目指し、世界の波に挑み続ける彼女を私たちも応援したい。

PROFILE

川合 美乃里プロサーファー

2017 WSL Women’s Qualifying Series Rankings アジアリージョナルチャンピオン
2017 ISA World Junior Surfing Championship U-18 Girls 個別団体戦「Aloha Cup」優勝 ※日本初快挙
2018 ISA World Junior Surfing Championship U-18 Girls 日本代表/個人 16位・団体1位
2018 URBAN RESERCH ISA World Surfing Games 日本代表/個人16位・団体1位
2018 WSL Junior #1「World Junior Championship」3位
2019 WSL QS 10000「Vans US Open of Surfing」17位
2019 WSL QS 1000 「Ichinomiya Chiba Open」13位
2019 JPSA 第7戦 「Trident Seafoods Chiba Ichinomiya Pro」優勝

代表・強化指定選手枠
NAMINORI JAPAN2020 強化指定選手 A指定