高速で急変化!三振を奪える"決め球"のメカニズムに迫った!

物体が高速で動くほど、曲がりにくくなるということは、多くの方がご存知のことと思います。自転車に乗る方の中で、スピードを出し過ぎて曲がりきれず、ブレーキをかけるという体験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。これは、物体が移動した際に、進行方向に対して動きを維持しようとする『慣性の法則』が働いているからです。

そんな自然の摂理を無視したような動きをするものが野球に存在することをMZL編集部が発見しました。それは、スピードが落ちず、急激にバッターの手前で沈む(消える!?)という特徴を持つ変化球、縦スライダーです。この魔球について調査していくと、実はピストルの弾丸と同じ原理が働いているという事実が見えてきました。

  • 2012.10.29

    休息も立派なトレーニング!

    「休息をとる」と聞くと、「休息=カラダを動かさない」というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、休息を上手く取ることでトレーニングがより効果的になります!

ボールと空気抵抗の関係性(一般的なストレートの場合)

縦スライダーのメカニズムについて、今回はミズノ株式会社研究開発部・主任研究員工学博士の鳴尾丈司に話を聞きました。変化球を理解するには、まずボールと空気抵抗との関係性を知ることが必要だといいます。

「例えば、ストレートの場合はボールにバックスピンがかかっています。また、投げられる際、空気はボールの進行方向とは逆に、ボールの周囲を流れています。このとき、ボールの下部の回転方向は空気の流れとは逆なため、ぶつかり合って『圧力』が上昇します。一方、上部は同じ方向のため圧力が低下します。この圧力差がボールに『揚力』を生みます。そのため、他の変化球に比べて落下しにくく、キャッチャーにまっすぐ飛んでいきます。実は、ストレートは究極の変化球とも言えるんですよ!」

縦スライダーの秘密はピストルの弾丸にあり!

では、縦スライダーはどうでしょうか。

「ずばり、『ピストルの弾丸』ですね。ピストルの弾丸は、いわゆるジャイロといわれる、ドリルのような回転をします。これは、空気の流れに対して、ボールの回転がぶつからず、空気抵抗は少なく、揚力も発生しません。そのため、速度は落ちず、重力に対して自然に落下しています。縦スライダーも同様の現象が起きています」

ピッチャーからキャッチャーにボールが届くまでの時間はわずか0.5秒ほど。この瞬間にバッターは球種を判別、もしくは予測して打たなければなりません。ましてや、縦スライダーはストレートのような初速があり、かつ、速度が落ちないため、バッターは伸びを感じます。さらに、ストレートと比較すると約1mの落差で空振りを誘います。別の変化球を織り交ぜながら投げられては、打つ方は当てることさえ至難の技ですね。

実際は投手ごとに微妙に回転する向きを変えて、左右に曲げるなど微調整をしているようです。野球が盛り上がるシーンで、すかっとした三振で打者を退けることがあると思います。まさに魔球とも言える縦スライダーは、そのシーンを作り上げる重要な球種。2014年シーズンは、そんな魔球にも注目してみてくださいね!