心理的限界を超える火事場の馬鹿力の秘密

ハンマー投げや重量挙げの選手が、大会本番に自己ベストをたたき出すケースがあります。自分が思った以上の力、いわゆる火事場の馬鹿力が発揮された状態です。はたしてこの力、厳しいトレーニングを積んだアスリートが極限状態に追いつめられた時など、限られたシチュエーションでしか出せないものなのでしょうか。

もともと人間の脳は筋肉や骨の損傷を防ぐため、脳で意識的にコントロールして使える力を抑制するリミッター(安全装置)がかけられていると言われています。そのため過度の緊張や危険が迫っている状況など精神的に追いつめられる要素がない通常時は、どんなに頑張っても「心理的限界」と呼ばれる、自分の意識のなかで限界だと思っているところまでしか力を発揮できません。しかしリミッターが外れた時は、「心理的限界」を超えて普段は出せないところまで筋肉の本来持っている力、「生理的限界」と呼ばれるところまで解き放つことができるのです。ちなみに「生理的限界」のおよそ70%が「心理的限界」だと言われており、いかにリミッターを外せるかが、ハイパフォーマンスのカギとなります。

この生理的限界まで一時的に近づける方法の一つが、ハンマー投げの選手のように大声で叫ぶこと。叫ぶことによって脳の興奮水準が高まり、その瞬間に使いきれていなかった筋肉を動かすために必要なところが一気に覚醒して、無意識的に通常以上の力が発揮できるのです。また別の方法としては、自分に暗示をかけるように不安を消し去り、目の前のことに焦点を合わせてポジティブなイメージだけを持つ、たとえば静かに祈るように目をつぶって雑念を払い、「自分はできる」とココロのなかで言い聞かせるのが効果的。これは記憶力をはじめ脳の潜在能力を最大限活用したい資格試験や昇進試験の時などに試してみると良いでしょう。

写真:Thinkstock/Getty Images