「カーボンニュートラル」を目指す中で、ミズノのカーボン事業を紹介 驚くなかれ! ミズノは自動車づくりの一端を担っている!

ミズノがスポーツ用品を製造販売していることは周知の事実(と自負しておりますが)、自動車製造の一端を担っていることはご存じでしょうか!? トヨタの「トヨタイムズ」のCM「なぜトヨタは水素エンジンでレースに出たのか」をご覧になられたことがあるかと思いますが、何を隠そうミズノはこの「水素エンジン車」に関わる素材を作っています!!

注:レースには「カローラスポーツ」で参戦しており、水素や水素タンク、水素をエンジンに導く補機類については、FCEV(燃料電池車)である新型「MIRAI(ミライ)」から流用されています。

MIRAI

トヨタ 「MIRAI」

「なぜミズノがトヨタと?」の謎を紐解くその前に、ミズノのカーボン製品づくりの歴史を紹介します。
今から遡ること59年前の1962年、FRP※1スキー板の生産で初めてミズノはカーボン素材を扱いました。(余談ですがミズノは日本にスキーを普及させる活動も大正時代からしていました)1982年には世界で初めてカーボンヘッドのゴルフクラブを発売。今では軟式野球・バドミントン・テニス等多岐にわたる競技のカーボン製品の製造販売を手掛けています。現在、ミズノのグループ会社ミズノテクニクスではゴルフクラブ、バドミントンラケットのシャフトを製造しています。

※1 繊維強化プラスチック(エポキシ樹脂やフェノール樹脂などに、ガラス繊維や炭素繊維などの繊維を複合して強度を向上させた強化プラスチック)

長年にわたりスポーツ用品のカーボン製品を手掛ける中、2000年代に入り「いままで培ったカーボンの成型技術を生かしスポーツ用品以外のカーボン製品を!」と社の方針が決まりました。多少動揺した社員もいたかもしれませんが、そこはミズノDNAが力を発揮! 今まで培ってきたカーボン加工技術が様々な異業種メーカーさんからのご要望に応えていきます。高速道路のETCレーンのバーや、車いすのホイールやパーツ、カシオの「G-SHOCK」のバンド等々。

  • ETCレーンバー

  • G-SHOCK

    カシオ 「G-SHOCK」

そこで本題。「なぜミズノがトヨタの車の水素エンジンに一役買っているのか?」について、ミズノテクニクスの弘中さんに聞いてみました。

ーートヨタの車の水素エンジンを作っているのですか?

弘中:ミズノがエンジンそのものを作っているわけではありません。トヨタさんのセダン型燃料電池自動車「MIRAI」の水素を貯蔵するタンクの外郭部分に使用する「トウプリプレグ」を作っています。

ーー聞きなれない言葉ですが「トウプリプレグ」とはなんですか?

弘中:髪の毛状の細いカーボン繊維を束ねたものを「トウ」と呼び、そのトウに樹脂を含浸させたものです。

ーーなぜ全く職種の違うトヨタに納品することになったのでしょうか?

弘中:ミズノテクニクスはスポーツ用品で培ったカーボン製品の成型技術のみならず、新規事業では製品をつくるための中間材料の製造技術のアピールも行ってきました。そこに興味を持っていただいたトヨタさんに商社を通じて材料を提供したところ、要求品質を満たし採用に至りました。

ーー気になるトヨタからの要求品質とはどのような内容だったのですか?

弘中:燃料電池自動車に搭載されるタンクの水素貯蔵圧力は70MPa(メガパスカル)という高圧です。例えば、飲料用のペットボトル。炭酸入りとそうでない物は厚みや形が違いますね。それは中からの炭酸ガスの圧力に耐える為の工夫です。圧力が強くなればペットボトル(タンク)も強くしないといけない。でも重くはしたくない。そこで金属と比べると1/4の軽さで10倍の強度をもつカーボンが求められる訳です。タンク構成外殻材には高品質・高強度のFRP※1が求められました。

ーートヨタからの要求に応えるために苦労した点は?

弘中:人の命を預かる車のタンク。間違っても問題を起こしてはならない部材のため、何千mある長さの繊維に均一に樹脂を塗布し、高い強度を保証することに苦労しました。

ーータンクをカーボン素材にする利点はどこにあるのですか?

弘中:カーボンはとても軽量な素材です。そのため車の総重量に影響を与えにくく、タンクを大きくすることができます。実際「MIRAI」には3つの水素タンクが装着されています。
また、ミズノのトウプリプレグの断面は“きし麺”とまではいきませんが断面が楕円状になっていて、他のトウプリプレグの断面は”普通のうどん“の断面のような丸に近いんです。例えば、断面が楕円と丸の麺を筒の様なモノに巻き付けていったとすると、明らかに丸よりも楕円の方が隙間(空間)を少なく密に巻き付けることができますよね。その差がタンクの強度へと繋がっています。タンクの外郭にトウプリプレグを巻き付けることによって、高圧に耐えうるタンクになります。

黄色い筒が水素タンク

ーートウプリプレグは水素タンク以外にも活用方法はあるのですか?

弘中:水素タンクに限らず、気体を圧縮して貯蔵する様々な用途のタンクに使用できます。
スポーツの分野ではゴルフクラブにミズノ独自技術の三軸ブレーディングシャフトに使われています。

トヨタの「MIRAI」はタンクに水素を満タンにした場合、なんと850kmも走行できるそうなんです!!
皆さんの車のガソリン満タン時の走行距離と比較してどうですか!?
おまけに燃料電池自動車は排気ガスを出しません!!まさに、カーボンニュートラル!!

「カーボンニュートラルに、ミズノのカーボン事業が役に立っている」
少々ややこしいですが、ミズノが環境保全活動に貢献をしている事実の発見でした!

▼ミズノテクニクス
https://www.mizuno-technics.co.jp/
▼カーボン事業
https://www.mizuno-technics.co.jp/cfrp.aspx