2021.07.13.

マツダ / ミズノのドライビングシューズ共同開発プロジェクト 〜プロジェクトメンバーに聞きました(後編)〜

前編では企画開発の苦労に関する話を聞きましたが、後編ではデザインの苦労やこだわり、両社の『らしさ』などについてお話を聞いていきます。

  • ミズノメンバー

    ミズノメンバー
    左:本多さん、中央:清水さん、右:中村さん

  • マツダ 藤川さん

    マツダ 藤川さん

  • マツダ 寺島さん

    マツダ 寺島さん

■両社の『らしさ』を存分にデザイン表現できた

ーーここからはデザインについてうかがっていきます。ミズノとマツダ、会社や作っている製品はもちろんですが、価格も材質もまったく違います。他社とコラボしながらデザインを作り上げる苦労はありましたか。

藤川:私もミズノの本多さんもプロとしてデザイナーをしているわけですから、その業界の様式美を自分なりに持っているのが当たり前です。しかも今回の製品がドライビングシューズということで、ミズノの領域であるシューズでありながら、マツダの製品であるクルマを運転する際に使用するギアでもあるという、ちょうど両社の領域が合わさる地点に位置するアイテムなんです。だからこそ、お互いの様式美や『らしさ』をうまく表現できればと考えていました。

ーーデザインを作っていく中で、共同開発だからこその苦労はありましたか。

藤川:マツダの視点での「こんなデザインにしたい」という要望も、シューズメーカーのデザイナー的には「なぜ?」と感じるケースも出てきます。お互いデザイナーとしては早い段階で打ち解けて話ができたんですが、仕事のコミュニケーションとしては、お互い普段の仕事のようにはいかなかったと思います。

本多:確かにミズノとマツダでは、普段デザインしている製品の大きさや質量がまったく違うので、すり合わせながらひとつのものを作るのに、普段よりも時間は掛かりました。ただ、デザイナー同士は言語が近いというか、美意識が共有されているというか、お互い言いたいことにはすんなり納得できたので、デザインのクリエイティブ面での認識の齟齬はなかったですね。今回は、最終製品がシューズということもあって、私がマツダのおふたりをリードするようにしました。

寺島:クルマの仕事とは異なる面はありましたが、こだわるべきところはしっかりこだわれたと思います。例えば、横からの見映えについては、シルエットの美しさや質感にこだわってマツダ側からかなり細かい調整をお願いしました。

ーーお願いして形にしてもらう過程で不安はなかったですか。

寺島:クルマのデザインも誰かにお願いして作ってもらうので、見守ることに抵抗や心配はなかったですね。ただ、広島と東京と大阪の3拠点の物理的距離は、サンプルなどが絡むとどうしても時間が掛かりますし、特に色は見る場所によって見え方も変わるので、そのあたりのギャップは感じましたね。クルマは世界中でたくさんつくる製品なので、開発に長い時間を掛けてトコトン細部までこだわり抜きます。クルマの開発の感覚で要望を出してしまっていたのに、それに応えていただけたのは本当に嬉しかったです。

本多:サイドのシルエットとソールの横に入るキャラクターラインは、細かく何度も修正しました。マツダさんからの要望に対してミズノ側もそれが良いとなり調整を重ねていったのですが、最終的に素材や製法、生産上の制限があって、マツダさんからの要望を100%完全には実現できないケースはありました。その時は心苦しかったですね。

ーーデザイン的に苦労した点はありましたか。

本多:シューズのアッパーにマツダさんのブランドカラーである赤を入れようとなった時、なかなかカッコイイ入れ方をピンポイントで提案できなくて……。もちろん最終的には上手く収まったんですが、結構頭を悩ませましたね。

藤川:赤が入っている場所が、ちょうど足首を曲げる時に支点になるポイントなんです。その支点に赤を入れたくて。場所はこのあたりが良いけど、挟み込むのか、縫い付けるのか、ステッチで入れるのか……さまざまな案をミズノさんから出していただいたんです。

本多:結局、提案したすべての案のサンプルを全部作って、マツダの皆さんにサンプルを見て選んでもらったんですよね(笑)

藤川:最後まで付き合っていただいて。

本多:私にとっては「ブランドを作るって、ここまでこだわるんだな」という新しい発見がありました。そのこだわりがブランドにつながっていくから、そこまで粘るんだなぁと感じていました。あと、素材の使い方やカラーリングなんかはさすがだな、と思うところも多くて勉強になりましたね。靴箱もデザインしたのですが、そこでも細かい要望をいただいて、改めて「ブランドを築くってこういうことか」と感心しました。

  • マツダ 藤川さん
  • マツダ 寺島さん

ーーマツダのおふたりから見て、ミズノのものづくりに感心した点はありますか。

藤川:クルマのデザインは複数のデザイナーが協力しながら進めますが、シューズは基本的に一人のデザイナーが担当します。シューズデザイナーは自分の『個性』を存分に発揮されていていいなと感じました。初心に立ち返って『デザイナー自身の個性を出す大切さ』を学ばせてもらった気がします。

寺島:クルマの開発は長ければ4〜5年掛けて進めていきます。シューズは一人のデザイナーがグイグイとプロジェクトをスピーディに押し進めていく、そのスピード感が素晴らしいな、と思いました。あと、クルマでは使わないけれどシューズでは当たり前という素材や加工を見せていただいて、それがとても刺激になりました。

ーー今回のドライビングシューズで、ミズノらしさやマツダらしさが最もよく出ている部分はどこですか。

本多:どこだろう……あまり意識しなかったですね(笑)。今回の開発は、結局機能美の追求なんです。素材の良さを最大限に生かすべく、最低限の調味料と調理法でシンプルに作り上げた日本食みたいな感じ。だからこそマツダとミズノの思想が合致した製品が生まれたんだと思う。『らしさ』をぶつけあっていたら、きっとうまくいってなかったんじゃないでしょうか。

藤川:制作過程でマツダらしさを意識した私たちの要望を本多さんが変換してシューズデザインに落とし込んでくださったので、その時点でミズノらしさは反映されていると思います。特に今回は先ほどお話しした横からのシルエットなどで、マツダ側も結構シビアな要望を出しました。それをスポーティーで軽やかなベクトルに変換してくださったのですが、そうした点がミズノらしさなのかな、と。結果的に両社の『らしさ』が存分に反映されたデザインに仕上がっていると思います。

寺島:本多さんがおっしゃった日本食みたいな感じ、これがすべてですよね。マツダは「カラーも造形の一部」と考えており、今回もスタイリングの狙いと一体になったCMFデザインが出来ていると思います。マツダの配色に対する考え方や作りこみに対する想い、それをミズノさんが粘り強く対応してくれました。CMFの領域でも両社のこだわりが詰まった商品になったと思います。

■未だかつてない運転感覚をぜひ体感して

ドライビングシューズ

ーー最後に、共同開発したドライビングシューズに興味を持ち、この記事を読んでくれている皆さんにメッセージをお願いします。

清水:今回のドライビングシューズに搭載した3つの機能『背屈サポート』『足裏情報伝達』『踵支点の安定化』を体感して、運転を少しでも楽しいと思ってくれれば嬉しいです。特に姿勢制御技術を通じて、週末ドライバーの方でも今までにない運転感覚を味わっていただけるという自負もありますので、ぜひ履いてみてください。

中村:まず、私が履きたいシューズなんですよね。いくつも試作品を作りましたが、サンプルサイズが27cmだったので、足のサイズが28cmの私はまだ履けてないんです(笑)。製品化されて28cmのシューズを履くのが本当に楽しみです。

本多:開発序盤の頃、デザイナー同士で「他社が作れない唯一無二のシューズを作ろう」と話していました。ぜひ同業他社の人たちに履いていただいて、そのあたりの感想を聞いてみたいです(笑)

藤川:最初にサンプルシューズを履いた時、その軽さと足裏の感覚がダイレクトに伝わる感覚に衝撃を受けました。ぜひ購入して、その衝撃を感じていただきたいです。シックなデザインと軽快な軽さ、そんなギャップも楽しんでいただけたら。私も家族の誕生日プレゼントとして購入します!

寺島:今回関わったメンバー全員が「世界一だ!」と思えるシューズを創ろうという想いで取り組みました。両社のブランドを伝えることに加え、プロジェクトメンバー全員が納得する物を作りました。ぜひ皆さんにも履いていただきたいですね。

ーー本日はありがとうございました!