2021.07.06.

マツダ / ミズノのドライビングシューズ共同開発プロジェクト
〜プロジェクトメンバーに聞きました(前編)〜

2021年7月、スポーツ品開発のために人の動きを研究し人と用具の調和を追求するミズノと、人間中心のクルマづくりで人馬一体の走りを追求する自動車メーカーのマツダが、ドライビングシューズを共同開発して一般発売しました。そこで今回は、ミズノ側からは開発を担当した清水さんと中村さん、そしてデザインを担当した本多さん、マツダ側からはデザインを担当した藤川さんと寺島さんという5人のプロジェクトメンバーに、共同開発ならではの苦労話などを聞いてきました!

ドライビングシューズ

■ミズノとマツダの企画開発&デザインスタッフが集結

ーー当たり前のことですが、ミズノの皆さん普段は別のシューズ開発やデザインの仕事をしているんですよね?

清水:今はグローバル研究開発部というところで、ミズノの新研究開発拠点の設立に携わるなど、社内の新しい事業の立ち上げに関わっています。このプロジェクトに参加していた当時はサッカーや野球などのシューズ開発を担当していました。

中村:主にシューズのアッパー部分の設計を主にやっています。あと、20年以上シューズ生産の現場にいたこともあってシューズを仕上げるという部分も担当しています。

本多:ライフスタイル系のシューズのほか、駅伝や陸上競技などで選手が使用する競技用シューズなどのデザインを担当しています。

ミズノメンバー

ミズノメンバー 左:本多さん、中央:清水さん、右:中村さん

ーーマツダ側の皆さんは普段どんな業務をされていますか。

藤川:クルマの内装と外装の両方の造形デザインを主に担当するデザイナーです。最近だとMX-30というマツダ車の外装に関わりました。

寺島:私はCMFデザイナーと呼ばれる、クルマの内装の色や素材をデザインする仕事に携わっていました。最近だとCX-30というクルマに関わっていました。今はブランドスタイル統括部という部署で、直近ではマツダコレクションの企画開発を行っています。

  • マツダ 藤川さん

    マツダ 藤川さん

  • マツダ 寺島さん

    マツダ 寺島さん

■ドライビングシューズ開発はミズノ初の挑戦

ーーまずは開発担当であるミズノのおふたりに話をうかがいます。開発段階で大変だったことは何ですか。

清水:まず、ミズノでは一般のお客様に発売する商品としてドライビングシューズを開発、製造、販売した経験がありませんでした。ですから、開発を進めるにはまず『ドライバーをサポートするドライビングシューズに求められる機能』を決め、それからそれを実現する技術開発に進みます。この『求められる機能を決める』のが大変でした。

ーードライビングシューズの開発経験がゼロだったから、ドライビングシューズに求められる機能を決めるところまでが大変だったんですね。

清水:最初から運転姿勢が大事で、それを実現するにはこんな機能があるといいよね、という話は両社で共有できていて、水泳の姿勢制御技術や足裏に多くの情報を伝えるミズノ独自のソール『MIZUNO COB』を組み合わせれば……というもくろみはあったんです。ただ本当に開発初期の頃は、想定が真逆だったりしたこともあって……(笑)
※足裏に多くの情報を伝えるミズノ独自のソール

ーー思い描いていた機能と必要な機能が真逆だったということですか?

清水:そうなんです。スピードを上げる時のアクセルペダルを踏み込む動き、いわゆる『底屈』をシューズでサポートすれば、姿勢を崩すことなくアクセルを操作できるだろうと考えていたんです。マツダのテストドライバーや操安性能開発部の方に履いていただくと「これ、逆ですね」と……。

ーーアクセルを踏む『底屈』の時じゃなく、戻す時にサポートが必要なんですね。

清水:自動車の運転で迅速さやサポートが求められるのは、アクセルを戻す動き、いわゆる『背屈』の方向なんです。マツダの皆さんから「アクセルを戻したり、アクセルからブレーキに踏み換える時にシューズのサポートが必要ですね」という話を聞いて。すぐに会社に戻って、ゼロから中村さんと知恵を絞り合うという(笑)

ーー中村さんは想定と真逆という結果を聞いて、いかがでしたか?

中村:自分たちのイメージとは真逆でびっくりしましたけど、ドライビングシューズは未知の世界なので「チャレンジのしがいがあるなぁ」という感じでした。「あれも、これも試してみたい!」という気持ちになったので自由にやらせてもらったこともあって、限られた時間の中で構造を固めていく部分では苦労しましたね。一方、デザイナーには私が自由にさせてもらった分、苦労されたかもしれませんね。

清水:シューズをテストしたマツダの皆さんのフィードバックが、普段私たちが接しているアスリートの言葉に似ている感じだったんです。感覚や求めるモノを上手に言語化してくださったおかげで「次どうするか」を明確にしながら取り組むことができました。

ーー『背屈サポート』『足裏情報伝達』『踵支点の安定化』の3つの技術開発ポイントが決まったあとは、開発はスムーズに進んだのですか。

清水:これはスポーツシューズの開発でも同様の事態が起こるのですが、開発が進むにつれてマツダの皆さんのリクエストもどんどん細かくなっていくんです。ここまではよくあることですが、その細かさのレベルがケタ違いで(笑)。普段のミズノでのシューズづくりでもやらないレベルまで突き詰めた気がします。開発担当としてはサンプル制作の回数や時間との闘いとなり、若干焦ってました。

中村:私は、科学的データをもとに構造や形を作り上げていく感じがあって楽しかったですよ(笑)。ただ、今回は量産品なので、生産工程や完成した商品の品質や機能を担保することがとても大切な為、デザイン調整が必要でその品質・機能・生産・デザインのバランスに苦労しました。例えば、デザイン的にはステッチを1本にしたいけど、シューズの強度や機能を考えたら2本必要というケース、スポーツシューズではよくあることなんです。そのあたりは、デザイナーの要望をどう実現するか、かなり頭を悩ませました。

ーーマツダとミズノ、両社のOKをもらうのに最も苦労したポイントはどこでしょう?

中村:『背屈サポート』のために踵の上部にジャバラ構造メッシュを搭載しているのですが、この部分を見た目にも美しく、なおかつしっかり機能させるのに苦労しました。


前編はここまで!開発現場のリアルな葛藤や悩み、仕事の楽しみ方などが聞けました。引き続き後編では、デザインに関する話を聞いていきます。お楽しみに!