INNOVATION OF WAVE

ミズノフットウエアの代名詞であり続ける機能MIZUNO WAVE、
そしてその代表作であるWAVE RIDER。
新しい機能やシューズが誕生しては
淘汰されることの多いフットウエア市場で、
誕生から20年経った今なお
色褪せることなく愛される理由は、
歴代開発者たちの飽くなき挑戦心と
モノづくりに対する真摯な姿勢だった。

TAKAYA
KIMURA
(木村 隆也)


MIZUNO WAVEおよび
初代WAVE RIDER開発者

WAVE RIDERの根幹の機能であるMIZUNO WAVE。それは、偶然の産物などではなく、先人から代々受け継がれてきた飽くなき探究心とチャレンジングスピリッツの賜物でもある。MIZUNO WAVEはどこから生まれ、どう進化してきたのか。そのルーツを、最大の立役者である開発者本人に余すことなく語ってもらった。

MIZUNO WAVEが誕生するまでには、大きくとらえて5つの進化があった。

ミズノのシューズづくりの歴史からお聞かせください。

ミズノのシューズづくりの歴史は古く、1910年代にまで遡ります。初めは野球シューズの販売からスタートし、1920年代にはすでに陸上スパイクも手がけていました。それから時は経ち、1970年代の世界的なジョギングブームの到来と共に、徹底した科学理論に基づくシューズづくりがスタートしました。1980年代に入るとシューズメーカーは、安全のためのランニングシューズ開発に取り組みはじめ、かかとの内側を硬くしたオーバープロネーションだけを防ぐシューズを主に開発していましたが、ミズノはオーバーサピネーションをも防ぐ機能“TRIANGLE MIDSOLE”を開発するなど、その頃より機能開発に強い会社でした。

MIZUNO WAVEができるまでに、どのような進化の過程があったのでしょうか。

1997年にMIZUNO WAVEが誕生するまでには、1980年代から大きくとらえて5つの進化がありました。年代順に列挙すると、初代MIZUNO WAVEといえるクッション性と安定性を両立した機能 “MAGICAL CLOTH MIDSOLE” 、次にそのクッション性を強化した新素材“SORBOTHANE” 、そのクッション性に反発弾性を加えた“TRANSPOWER”、さらにそのTRANSPOWERに安定性を加えた“TRANSTAB”、そして最後にそれらすべてを組み合わせた“DYNAMIC FOOT CONTOUR”と続きます。

ヒールストライクをテーマに、新素材でクッション性をUPする第一次機能戦争へ。

MIZUNO WAVEの原型である“MAGICAL CLOTH MIDSOLE”についてお聞かせください。

“MAGICAL CLOTH MIDSOLE”は、前述のTRIANGLE MIDSOLEの発展系として1985年に誕生しました。その最大の特長は、ミッドソールの間に一枚の不織布をインサートすることでクッション性を下げることなく、オーバープロネーションやオーバーサピネーションの原因となる横方向への強度を高め、安定性を高めたことにあります。この頃はジョギングブームの影響もあり、ヒールストライクの解消を掲げたクッション性の高いシューズが主流であり、安定性を高めるにしても硬くすることが一般的でした。しかしミズノはたった一枚の不織布を使うことで、本来相反するクッション性と安定性の両立を実現したのです。但し、問題もありました。素材の違いを見せるくらいのシンプルさがユーザーに響いた当時、この構造設計はソール全体の話ということもあり訴求するのが難しかったのです。そう、時代はまさに新素材を使っていかにクッション性をUPするかを競う、第一次機能戦争真っ只中。こうして、シューズメーカーによる素材競争にミズノも突入していくことになるのです。

クッション性という「守り」の機能を重視した時代から、反発弾性という「攻め」の機能を重視した第二次機能戦争へと。

“SORBOTHANE”についてお聞かせください。

MAGICAL CLOTH MIDSOLEに付加されるカタチで1986年に誕生したのが、衝撃吸収率94.7%を誇る新素材“SORBOTHANE”です。この時代は、産業界でセラミックやカーボン、チタンといった新素材が次々に生まれた時代であり、まさに新素材=新機能を意味した時代の産物でした。この素材競争もコスト面や時代の変化もあって長くは続かず、それまでの衝撃吸収を担うクッション性という守りの機能を重視した時代から、今度は反発弾性という攻めの機能を重視した第二次機能戦争へと発展していきます。

“TRANSPOWER”と“TRANSTAB”についてお聞かせください。

1989年に誕生した“TRANSPOWER”がまさにそれで、衝撃吸収材“SORBOTHANE”に反発材“H2”を融合したものです。H2は元々ゴルフボールの中身として使われていたスーパーボールのような素材で、これに穴を開けることで大きく変形し、足への衝撃をパワーへと変換するシステムでした。しかし、かかとだけ跳ねて前足部と分離するという課題もあり、そのTRANSPOWERに今度は、中足部まで伸びた大型ボトムプレートや大型スタビライザーを加え、安定性をさらにプラスしたのが、1991年に新たに開発された“TRANSTAB”です。

前述の全ての機能を一体プレート化したのが、“DYNAMIC FOOT CONTOUR”だった。

“DYNAMIC FOOT CONTOUR”についてお聞かせください。

ここまでの流れは、新機能に新機能を足していくことで、かかとだけではありますがだんだんと一つの大きな機構になっていくことがわかります。そしてついに、これら全ての機能(クッション性・安定性・反発弾性)をバランスよく一体プレート化することに成功したのが、1993年誕生の“DYNAMIC FOOT CONTOUR”です。
この年、ミズノは“DYNAMIC FOOT CONTOUR”を引っさげて世界に挑みます。それが世界同時発売モデル<モンドシリーズ>です。シューズビジネスを拡大させたいミズノにとっては、まさに世界への足掛かりとなる挑戦だったのですが、結果は惨敗。要因としては、様々な機能を追求するあまりにパーツが増え、シューズ全体が大きくなった分、重量やコストの問題が出てきたことが挙げられました。

ミッションは、97年までに再度、海外で戦えるシューズづくり。その答えは、パテントを見直し、リバイバルすることにあった。

MIZUNO WAVEの誕生背景についてお聞かせください。

私は再度、世界へ打って出るため、94年より家族共々アメリカへ行き、現地のことを学んだり、日本で開発段階のシューズをアメリカのチームに伝える日々を過ごしました。その後もできるだけパーツを小さくしたり、軽くしたりして海外に受け入れられるシューズを目指して試行錯誤を繰り返しましたが、他社も似たようなことをしていて、“これぞミズノ!”というオリジナリティーに欠けた時期が続きました。そこで会社より97年までに再度、海外で戦えるシューズを開発せよという具体的な話が持ち上がり、日本の開発者である北から、ミズノオリジナル機能をリバイバルしようという提案がありました。それはミズノにはいい財産がたくさんあり、それらのパテントを見直すことで当時のものを今ならこうやって再現できるという提案でした。当時我々は過去のパテントの中から、ミズノオリジナルといえるクッション性と安定性を両立した“TRIANGLE MIDSOLE”と“MAGICAL CLOTH MIDSOLE”に目をつけ、その両方をリバイバルした設計案を持って、アメリカの企画会議へ望みました。実はその時、私たちはTRIANGLE MIDSOLEの方を真っ先にプレゼンしたのですが、これが驚くほどのノーリアクションでした。

焦った我々は、実はもう一案あるんですとMAGICAL CLOTH MIDSOLEを元にした「MIZUNO WAVE」をプレゼンし直すことに。これが構造にも名前にもインパクトがある!と大絶賛で、デザイナーのトゥアン・リーの呼びかけで会議室のメンバー全員からウエーブが起こったのを今でも覚えています。

1997年に誕生したMIZUNO WAVEのパテントは、1981年にすでにあった。

なぜ“MAGICAL CLOTH MIDSOLE”の誕生からここまで時間がかかったのでしょうか。

1985年に誕生したMAGICAL CLOTH MIDSOLEについてですが、その原型となるパテントは1981年にはすでにあり、そこにはすでに波型が描かれていました。また、波の丸みや振幅を変えることで、それぞれのニーズに適したクッション性と安定性となることも記されていました。しかし、当時はまだ波をきれいに描く工業的技術もなく、1985年の段階では四角の波型をつくるのが精一杯だったようなのです。こうして1997年、MAGICAL CLOTH MIDSOLEは、その名を「MIZUNO WAVE」にリバイバルし、復活を遂げたのです。

MIZUNO WAVE最大の魅力は、たった一枚のプレートでこれまでの課題をすべてクリアしたところにある。

MIZUNO WAVEの魅力についてお聞かせください。

クッション性と安定性という本来相反する機能をさまざまな素材の組み合わせではなく、たった一枚のプレートで解決したところがMIZUNO WAVE最大の魅力です。これにより、それまでの課題だった軽量化が図れたこともポイントです。そして現在では目的別、各競技ごとにさまざまなタイプのMIZUNO WAVEがあることからもわかる通り、波の丸みや振幅を変えることで、あらゆる動きに対応する汎用性の高さも当初よりわかっていました。

進化を続けるミズノウエーブ。その可能性は無限大なのでしょうか。

どう進化させるべきか、それはMIZUNO WAVEという構造設計を先行させる話ではなく、ユーザーのインサイトを知ることで生まれます。これが一番大切で、そのためにMIZUNO WAVEをどう進化させていくかをミズノとして常に追求していきたいと考えています。

冷蔵庫にある普通の素材で、どれだけ美味しい料理をつくるか。その挑戦が、より多くの人に履いてもらう事につながる。

最後に開発者としてのこだわりをお聞かせください。

ミズノは昔から機能開発に強い会社であり、構造設計が得意な会社です。この構造設計でいいものをつくりたいというのは今も変わりません。これは例えるなら、新しい素材ではなく、冷蔵庫にある普通の素材でどれだけ美味しい料理をつくるか、というチャレンジに似ています。MIZUNO WAVEも一つ一つの素材は普通なんです。その組み合わせの巧さで、結果的に高機能をより安く、より多くの人に提供することにつなげられればと思っています。

Tuan
Le
(トアン・リー)

WAVE RIDER 1~15
デザイナー

世界を股にかけるスポーツシューズデザイナーとして、名だたるブランドでヒット作を飛ばしてきたトゥアン・リー氏。フリーランスデザイナーとして今なお第一線で活躍するこの大御所が初代WAVE RIDERを手掛け、育てあげてきたことは意外と知られていない。

長い歴史を持つ日本の企業で働くことは魅力的だったし、「縁」を感じた。

ミズノで働き始めたきっかけを教えてください。

1989年に、とあるきっかけから当時ミズノの米国担当者だった方から連絡をいただいたのが始まりです。私は当時、その時代を代表するスポーツメーカーでフットウエアデザイナーとして働いていました。彼らは自社内のデザインスタジオをNYに構え、私はエアロビクスシューズなどのデザインを担当していました。そこでの仕事に満足はしていましたが、ミズノからのオファーが来た時には何の迷いもありませんでした。長い歴史を持つ日本の企業で働くことは魅力的だったし、私自身ゆかりのあるアジアの企業ということにも「縁」を感じたからです。

MIZUNO WAVEを搭載したシューズの開発とデザインは社運をかけた戦いでもあった。

どのような経緯でWAVE RIDERのデザイナーになったのでしょうか。

最初からランニングシューズのデザイナーと決まっていたわけではなくて、実際に働き始めた時にテニスシューズとランニングシューズのデザイン、どちらをやりたいかと聞かれたので、迷うこと無くランニングシューズと答えたのがきっかけです。なぜならランニングは私の好きなことであり、そのシューズデザインはずっとやりたいと思っていたことでもあったからです。こうして、私のミズノでのキャリア、そしてランニングシューズ担当としてのキャリアが始まりました。その当時のミズノには今のようにユニークな機能性を持つランニングシューズはまだなく、明確なストーリーや機能性を持ち合わせたシューズでなければ市場に受け入れられない厳しい時代でした。それゆえ、商品開発の木村さんと私は日々、様々なアイデアを持ち合いながらユニークな機能性を持った商品企画に奮闘し、ついに辿り着いたのがMIZUNO WAVEという構造設計でした。当時ミズノのアメリカにおけるランニング事業は厳しい状況で、このまま上手くいかなければ撤退、という話も出ており、MIZUNO WAVEを搭載したシューズの開発とデザインは社運をかけた戦いでもありました。

事業撤退もあり得る状況の中、会社は我々がやろうとしていることの可能性を信じてくれていた。

社運をかけたグローバルモデルとして発表された初代WAVE RIDER。そのプロジェクトメンバーに選ばれた思いをお聞かせください。

振り返ってみると、すごく恵まれたチームでしたね。お互いエゴもなく、いい意味で仲良くやっていた。結束も強く、自分たちがやっている仕事に自信を持って取り組んでいました。同時に我々はとてもラッキーだったとも思います。厳しい状況の中、会社は我々がやろうとしていることの可能性を信じてくれていましたから。
例えうまくいかない時でも、当時水野正人氏(現会長)が「One step at a time(一歩ずつ前に進めば良い)」と声をかけてくださり、その言葉が私の自信と信念にどれだけ大きな影響を与えてくれたことか。また、チームリーダーだった商品企画の太田さんは一番身近なメンバーとして、彼と一緒なら何でもできると思わせてくれました。このプロジェクトの経験から私は、「既成概念から飛び出すことを恐れない強さ」を学びました。もちろんプレッシャーも感じていましたが、我々の置かれた状況下では失うものなどありませんでしたね。

MIZUNO WAVEのプレートが機能を保ちつつ、美しくあるために何度も工場に通っては調整した。

初代WAVE RIDERのメリット、デメリットはどのようなものだったのでしょう?

まずはメリットですが、「機能」が視覚的に非常にわかりやすかったこと。
そして何よりも、「履いた時にすぐわかる」こと。履いた時のMIZUNO WAVEの柔らかさや反発力。当時まだ誰も感じたことのない、新しくユニークなシューズの感触です。
その一方で、デメリットはパーツが非常に細かく、多いことでしたね。

それゆえに最適なバランスを生み出すためには生産性が悪く、ターゲットコストの実現が非常に難しかったことを記憶しております。そんな背景もあり、現在の商品群はパーツを必要最低限に抑え、コストを最小化することが1つのデザイン方向性になっていることがわかります。また、MIZUNO WAVEに関しても、完成系のあの仕上がりにするのには非常に苦労しました。挟み込んでいるMIZUNO WAVEのプレートがその果たすべき機能を保ちつつ、美しくあるために何度も工場に通っては調整し、商品発売までは時間との戦いでしたが何とか形にできることができました。

その後のWAVE RIDERシリーズとミズノとの関わりを教えてください。

私は初代WAVE RIDERからWAVE RIDER15までのデザインを担当していたので、今でもWAVE RIDER 15までの全てのパーツ・機能名は言えますよ!笑
WAVE RIDER 15以降になると事業もチームも大きくなり、私の役割も徐々に変化していきました。そしてWAVE RIDER 15を節目に、より未来を意識した先進的な商品開発部分に協力することになりました。前述の通り、より労働力を減らしてオートメーション化した、パーツの少ない製品のコンセプトデザインを担当しています。

日本特有の文化やブランドを象徴するデザインを常に意識してきた。

最後にウエーブライダーファン、そして20周年を機に興味を持った方に向けて一言お願いします。

私にとってWAVE RIDERは、ミズノのランニングシューズを最高峰ブランドにのし上げるための生涯ワークでもあります。そのため、私はその背景にある日本特有の文化やブランドを象徴するデザインにこだわってきました。例えばそれは、美しく、でも控えめでありながら機能的な強さを引き出したデザインであったり、研ぎ澄まされたシンプルな美意識を宿したデザインであったり。そんな思いは今のWAVE RIDERにもしっかり継承されていると思います。
私は日本という国が大好きで、毎回訪れるたびに景観や文化的な名所に通い、商品のインスピレーションを描くためにじっくりと時間をかけます。
そして未だに、私は初めて京都を訪れた時のことが忘れられません。自分の眼の前にあるものの美しさに強く感銘を受けました。その時の衝撃は今の人生にも大きな影響を与えており、仕事の原点となっています。
毎シーズン商品は進化しますが、そのたび私はそこに新たなインスピレーションをもたらすことを心掛け、既に完璧に近い商品をさらに美しく仕立てるための努力を惜しみません。
私はこの関係性やものづくりの原点が変わることなく、今後もより良い商品が生まれてくることを祈ります。そんな我々の思いを形にしたのがWAVE RIDER 20であり、私がそうであるようにそんなWAVE RIDER 20の走り心地の良さに共感してもらえたら幸いです。

Tomohiro
Ota
(太田 友宏)

WAVE RIDER 1~13
商品企画担当

MIZUNO WAVEのシンボルとなるシューズ、WAVE RIDERシリーズの生みの親とも言える太田。当時、チームリーダーとして開発・デザイン担当をまとめ、ゼロからWAVE RIDERを手掛けたキーマンに、20年前の当時を振り返ってもらった。

当時はメーカーの過度な機能開発が、消費者を置き去りにしていた。そこでランナーみんなにずっと履いてもらえるシューズを作ろうとなった。

MIZUNO WAVEの開発はそもそも、ランニングシューズのために始まったのでしょうか?

そうです。ランニングはすべての競技の基本であり、色んな人にアクセスできるため、ランニングシューズのために開発しました。

ウエーブライダーは、どのようにして生まれたでしょうか?

90年代当時の市場はスニーカーブームの到来もあり、常に新しいシューズや機能が求められる熾烈な競争が繰り広げられていた時代でした。ミズノも機能開発に強い会社だったため、毎年のように様々な新機能や新商品を打ち出していました。結果、機能開発に没頭し、毎年商品が変更するあまり、「私が気に入っていたシューズがもうない」というお客様からの声が上がるなど、気が付けば消費者を置き去りにした悪いサイクルに陥っていました。そこで原点に立ち返り、“できるだけシンプルで分かりやすい機能を開発しよう”“ランナーみんなにずっと履いてもらえるシューズを作ろう”とチームに呼びかけ、開発された機能がMIZUNO WAVEであり、WAVE RIDERというプロダクトなのです。

ミズノウエーブの開発で、会議室のメンバーからウエーブが起こった。

グローバルモデルとしてローンチされた初代WAVE RIDERの反響はどうでしたか?

WAVE RIDERの売りとなる新機能「MIZUNO WAVE」が社内の会議でプレゼンされた当時は、“これはスゴい!”“WAVEという名前もインパクトがある!”と絶賛され、会議室のメンバー全員からウエーブが起こったほど盛り上がったのですが、当時のMIZUNO WAVEの製法は今と違い、作るのがとても難しく、効率的に量産できるものではありませんでした。新機能ということでマスメディアは大きく取り上げてくれましたが、実はユーザーの評価はあまり良いものではなく、重さやフィッティングなどに課題を残しており、そのままでは次作を出せないほどでした。ただ、MIZUNO WAVE自体にはクッション性と安定性を両立できる独自の機能として十分な可能性を感じていました。そこで根本的な設計をゼロから見直し、ラストやヒールカウンターなどすべてを組み立て直しました。MIZUNO WAVEの製造方法の改善により生産性は高まり、その結果、フィッティングと軽量性が飛躍的に向上。( 初代モデルでは365g(26.0㎝片方)あった質量も330gに軽量化。)さらにランニング専門誌「RUNNER’S WORLD」の“EDITOR’S CHOICE”も受賞。初代RIDERからRIDER 2のアップデートがなければシリーズとして続いていなかったかもしれないですね。

車や電車の「乗り心地」を左右する現象を徹底調査。このオリジナルな観点から生まれたのが<WAVE RIDER 8>。

数々の賞を受賞しているRIDERシリーズ。一番思い入れのあるモデルは?

私個人としては受賞歴よりもユーザーの声の方が大切です。例えばWAVE RIDER 6は「RUNNER’S WORLD」の“BEST UPDATE”を受賞し市場では高い評価を受けましたが、一部ユーザーからは「コツコツする」という声がありました。そしてその正体が何なのかを突き詰めるために、「乗り心地」という観点で開発に調べてもらったところ、車や電車の乗り心地を左右するのは急発進やブレーキ時の前後の揺れであり、走っている時もこれと同じ現象が起きているのではないかという興味深い回答が返ってきました。我々はこの考察を基に新たな機能として「スムーズライド」を開発。「乗り心地」をキーワードとしたこの新機能を搭載したWAVE RIDER 8(※大幅なリニューアルは2年に一度だったため、WAVE RIDER 7ではなかった)を市場へと投入することになったのですが、この「乗り心地」の良さにどう気づいてもらい、どう履いてもらうかという難題が立ちはだかりました。これに対して私たちは、当時ホワイト中心のシューズ市場では画期的なALL BLUEカラーを新色として発売。またこのシューズをショップ店員に履かせ込むという仕掛けにより販売を後押し。結果、WAVE RIDER 8のセールスは好調で、プロダクトの良さをユーザーはもちろん販売店にも理解していただき、その次のWAVE RIDER 9も好調なセールスへとつながるいいサイクルができました。受賞歴はないけど、個人的にはこのWAVE RIDER 8がWAVE RIDER 2同様思い入れのある商品であり、WAVE RIDERシリーズを新次元へと進めたモデルだと思っています。

それぞれのモデルに愛着はあるけど、満足した瞬間はない。ユーザーの言葉になっていないヒントが、このシューズをもっとよくできると思わせる。

WAVE RIDER企画者としての一貫したこだわりをお聞かせください。

名前の通りシューズのライド感、走り心地の良さがWAVE RIDERの一貫したコンセプト。ランナーは気に入ったシューズを安心して履き続ける傾向にあるため、私たちもこのWAVE RIDERシリーズを通して“やっぱりWAVE RIDERはこうでなきゃ”という、他にはない唯一無二の走り心地を目指しています。

企画者としての要望はどこから生まれますか。

先ほどのWAVE RIDER 6のアップデートは「コツコツする」というユーザーの言葉になっていないヒント、感覚的だけどこういうことを言っているんだろうなという些細な声を見逃さないよう努めてきた結果。私自身、それぞれのモデルに愛着はあるけど、満足した瞬間はない。それはこうした声を拾うことでこのシューズをもっとよくできると考えるからであり、他社とは違う切り口のプロダクトはそうした声から生まれるものと考えています。

ランニングは商品のリピート率が高く、シリーズ化することはランナーの期待に応える価値あること。

20年、愛され続けてきた長寿シリーズになることは予想できましたか。

正直なところ、当初はここまで続くとは思っていませんでした。しかし、ある程度シリーズとして確立された時、続けなきゃとは思いました。ランニングは特に商品のリピート率が高く、シリーズ化することはそうしたランナーの期待に応える価値あることだからです。

最後にWAVE RIDERファン、そしてWAVE RIDERを履いたことのない方に一言お願いします。

WAVE RIDERシリーズは、他にはない走り心地を長きにわたり追求してきた、ミズノランニングを代表する一足です。WAVE RIDERならではのより良いランニング体験を皆様に提供できるよう今後とも努めていきたいと思います。

Tomoyuki
Yonekawa
(米川 智之)

ランニングシューズ企画ディレクター
WAVE RIDER 15~20
商品企画担当

WAVE RIDER 20の商品企画ディレクターを務め、ミズノUSAポートランド・ランニング・センターに所属する米川。足サイズ30㎝を誇り、なかなか自分に合うシューズのなかった彼が初めてWAVE RIDERに出会い、衝撃を覚えたのはミズノに入社してからという。そんな不思議な縁を持つWAVE RIDER 20の最重要人物に話を聞いた。

今までの好かれていた良さを損なわずに、“感動”や“驚き”をいかに与えられるかを強く意識した。

WAVE RIDER 20周年モデルの企画者としての想いをお聞かせください。

WAVE RIDERはミズノを代表する大人気シリーズであり、今作はその20周年モデルゆえ皆の期待値も大きいだろうというのはありました。長く続いているモデルというのは現状で満足されている点が多く、大きな変更はしにくいものなのですが、それではつまらないと思う人も勿論いる。そこでWAVE RIDER 20では、今までの好かれていた良さを損なわずに“感動”や“驚き”をいかに与えられるかを強く意識して企画をスタートしました。また何より私自身に加え、ミズノ社員や一緒に仕事をしているメンバーにもWAVE RIDER愛用者は多いので、そうした自分達もいちユーザーとして納得でき、心からワクワクするプロダクトを目指そうとなりました。

WAVE RIDERシリーズを語るキーワードとして浮かび上がってきたのが「柔かさ」「反発」「安定」だった。

今作のリニューアルにあたり、具体的な改善点は何だったのでしょうか。

WAVE RIDERユーザーのインサイトをゼロから調べ直すため、「WAVE RIDERのどういったところが良いのか?どういった方向性がさらなる進化へつながるのか?」を約150名のテスターで調査しました。テスターの皆さんからはこちらで用意したテストシューズを数多く試してもらい色々な反応を集めることができました。そして様々な感性を数値化して商品づくりに落とし込む“感性工学”に基づき、走り心地を向上するための細かな要因を分析しました。その結果、WAVE RIDERを進化させるキーワードとして浮かび上がってきたのが、「柔らかいクッション」「強い反発力」「しっかりとした安定感」という言葉でした。WAVE RIDERはクッションに優れたモデルであると同時に、良い意味で『硬さ』が感じられます。その硬さから生まれる強い反発力、軽快感、スピードの出しやすさが受け入れられてきた証であり、私たちとしてもWAVE RIDERの特長としてしっかり守ってきたところです。WAVE RIDERが好きな人であれば、このポイントは絶対外せないはずです。けれど裏を返せばその硬さはWAVE RIDER 20を企画する上での課題でもあり、「柔らかいクッション」「反発」「安定」という本来相反する機能を今回いかに上手く昇華させるかがポイントとなりました。

“心地よい浮遊感”や“跳ぶような走り心地”を今作でより感じてもらえるかと思う。

WAVE RIDER 20の開発で最も注目してほしい点をお聞かせください。

WAVE RIDER 20のMIZUNO WAVEには今回新たに<cloudwave*>という名称を付けているのですが、その名の通り“心地よい浮遊感”や“跳ぶような走り心地”を今作でより感じてもらえるかと思います。一般的にはそうした軽快感や反発力を追求するとシューズは硬くなる傾向にあり、WAVE RIDERもウエーブプレートを内蔵しているため硬さを感じやすかったのですが、今作ではそれを超えた新たなレベルに到達できたと思います。
具体的な話でいうと、新開発のcloudwaveは従来と違い、ウエーブプレートの最もクッションが必要なかかと部を凸状にすることで大きくたわませ、重心が前へ移動するにつれ凹状とすることで足がブレないようにしています。つまり、より柔らかな着地と、より安定した走りという2種類の機能を一枚のウエーブプレートの中で実現させています。さらにかかと部には今回新たに柔らかさと反発力を増強した<U4icX(ユーフォリックエックス)>を搭載し、cloudwaveとの相乗効果で、より柔らかく、より反発力があり、でも安定感のあるシューズに仕上げることができました。感性工学テストでコンセプトと方向性を固め、さらに約100名に実施したテストシューズの結果で面白かったのは、シューズは前作から軽くはなっていないのに、“かなり軽くなったね”という意見が多数あったこと。これは“浮遊感”の元となる柔らかさと大きな反発力をしっかりと感じてもらえた結果だと思います。*cloudwave - 商標出願中

このほかに注目すべき点を教えてください。

アウトソールに発泡ラバーを使用しブロックの配列や形状にも工夫を凝らすことで、クッション性、反発性、グリップ力、耐摩耗性を向上させています。また前足部のアッパーは、大きい網目と小さい網目を組み合わせた新開発の<Engineered Mesh>にすることで、高い通気性とホールド感を高めています。

シリーズ初となるゴアテックスモデルについてお聞かせください。

ゴアテックスを使用した多くのシューズは全体的に硬くなりがちですが、本作は伸縮性があり柔らかく、かつ屈曲性のある新ゴアテックス素材を採用しWAVE RIDER 20特有のクッション性や柔らかなフィット感をしっかりと実感していただける仕上がりになっています。この他にも360度に再帰反射素材を使ったり、アップダウンの激しい山道でもしっかりグリップしてくれるアウトソールとするなど、天候や夜間、オフロードに左右されないタフな走りが魅力の一足となっています。

“走る歓びを感じられるシューズ”。それがWAVE RIDERの何よりの魅力。

改めてですが、WAVE RIDER20のターゲット層を教えてください。

ランニングを始めようと思っている方からトレーニングをするトップアスリートまで、幅広くカバーするシューズだと思っています。また、WAVE RIDERシリーズは世界中のランナーをベースにラスト(足型)を作っているため色んな足に合うという点で、自分の足に合う靴が見つからない方にもおすすめです。私自身、足が30㎝あり癖も強く、なかなか思うようなシューズがなかったのですが、WAVE RIDERを初めて履いたときはそのフィット感に大変驚いたものです。(笑)

WAVE RIDERシリーズの魅力を一言でいうと?

“走る歓びを感じられるシューズ”です。色んな機能がトータルでバランスよく備わっているけど結局それは何だと言われると、“走るのがすごく楽しい!”と心から感じられるシューズなので。

シリーズとしての歴史は長いが、まだまだやりたいことはいっぱいある。

クラウドウエーブおよびWAVE RIDERシリーズの今後の進化についてお聞かせください。

イメージですが、風船が風に揺られてスーッと動いているような、全く外力を受けない、体が重いのに軽くなって走れるようなシューズにしていきたいと思っています。シリーズとしての歴史は長いですがまだまだやりたいことはいっぱいあり、裏切らない走り心地はもちろんですが、次はそうきたかという驚きや発見をWAVE RIDERシリーズで常に提供していきたいと思っています。

最後にWAVE RIDERファン、そしてWAVE RIDERを履いたことのない方に一言お願いします。

WAVE RIDERシリーズは今作で大きく進化を遂げました。それは我々の挑戦の証でもあり、たくさんのファンの皆様がいたからこそ。WAVE RIDER 20を通してそういった人たちに驚きや感動を感じてもらえればこれ以上嬉しいことはありません。色んな足に合いやすいので、まだ履いたことのない方もこれを機に騙されたと思って是非一度履いてみてほしいです。

Yusuke
Ide
(井出 裕輔)

WAVE RIDER 19~20
デザイナー

パフォーマンスシューズにおけるデザインの役割は大きい。颯爽と走る自分をイメージさせる力、あるいは数あるシューズの中から履いてみようと思わせる力。ライダー20のデザイナーが目指したその役割とは何か、具体的に伺った。

ライダーが20年間ずっと生き残れたのは、良い意味で特別じゃなかったから。

ウエーブライダー20周年モデルのデザイナーとしての想いをお聞かせください。

ライダーシリーズは、「ライダーをください」と指名買いしてくださるランナーが多いシューズであり、その方たちの期待を絶対裏切れないとは思っていました。そうじゃなくても、前モデルと何かが違うだけで選択肢に入らないほどシビアな目で選ばれている。その方たちに満足してもらうためにも、自然とハードルは初めから高かったですね。個人的な役割としては、開発から基本設計となる図面が出てきた時に、線画を描くだけでは納得のいくデザインにならないので、カタチとしてキレイに見える設計を開発に投げかけ、デザイナーの枠にこだわらず、開発と相互に協力しながらより良いシューズを目指しました。

シリーズとして、ブレることのないデザインコンセプトをお聞かせください。

デザイン的観点でいうと、ライダーが20年間ずっとランニングフットウエア市場で生き残れたのは、良い意味で特別じゃなかったから。一部の方にしか受け入れられない奇抜さより、みんなに愛される履きやすさ、スタンダードなデザインであり続けることがライダーシリーズの魅力でもあるのかなと。

ライダー20は、大きくアップデートされたことが伝わるデザインにしたかった。

WAVE RIDER20の一番のデザインポイントを教えてください。

ライダー19の時は、18からそのまま安心して買い替えられることを大切にグラフィックのみの変化としていました。その点、ライダー20は大きな節目となるモデルであり、ミズノウエーブの構造も進化したので、大きくアップデートされたことが伝わるデザインにしたいと考えていました。そのため、アッパーデザインに関して、ライダー19までは単一柄の一般的なメッシュだったものを、ライダー20では部分ごとに編み方を変えたこの一足のためだけに新開発したメッシュを採用しています。

また近年の傾向として、パフォーマンスシューズを日常シーンで履く人が多いので、シーンを問わずよりウエアラブルなデザインとすることが、より多くの方にフィットするだろうと思い、履きやすい単色に見えるアッパーデザインとしました。でもそれだけではつまらないので、二層構造のレイヤードメッシュにしてパッと見は単色だけど、よく見ると一層下の層にパフォーマンスを感じさせるグラフィックが入っているデザインに。ここが一番のデザインポイントとなっています。

レイヤードメッシュをデザインするにあたり苦労した点は?

二層構造ゆえ、下層のグライフィックの見え方が色や光の当たり方、穴のサイズが少し小さいだけでも見えにくくなるので、その点は苦労しましたね。すべてのパーツを取り寄せ、何色と何色の組み合わせがよく見えるかを一色一色検証を重ね、色のコントラストを出すため、地道な日々が続きました。

重そうなシューズ、野暮ったいシューズは、店頭で手にさえ取ってもらえない。

ジャパンブランドらしいデザインへのこだわりはありますか。

今作では陰影が美しく見えるデザインにこだわり、ミッドソールの造形に大胆な抑揚をつけています。光の当たり方で表情が変わり、シューズとしてよりシャープで立体的に見えるデザインを目指しました。店頭では重そう、野暮ったいという見た目だけで手にさえ取ってもらえないので、お客様のアイキャッチになるようにディテールにもこだわっています。

最後にWAVE RIDERファン、そしてRIDERを履いたことのない方に一言お願いします。

最後にWAVE RIDERファン、そしてRIDERを履いたことのない方に一言お願いします。