「野球のため」を第一に考えた人工芝

2016年 西武プリンスドームに野球のことを最優先に考え
共同開発した「MS Craft Baseball Turf」が採用された。
この新しい人工芝が、選手たちの「走・攻・守」を足元から支え、
激戦必至のペナントレースを見守っていくこととなる。
開発や施工のプロセス、導入までの経緯をダイジェストで振り返る。

「野球のため」を第一に考えた人工芝

2016年 西武プリンスドームに野球のことを最優先に考え共同開発した「MS Craft Baseball Turf」が採用された。この新しい人工芝が、選手たちの「走・攻・守」を足元から支え、激戦必至のペナントレースを見守っていくこととなる。開発や施工のプロセス、導入までの経緯をダイジェストで振り返る。

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[出典]月刊体育施設2016年3月号より

野球専用人工芝の挑戦

8年ぶりに人工芝の張り替えを実施した西武プリンスドーム。
衝撃吸収、耐久性など最先端技術を駆使したグラウンドとして装いを新たにした。
ダイナミックなプレーが数多く生まれることだろう。
景観性にも優れ、観客も良い環境で野球観戦をすることができる。
プロ野球球場初の野球専用人工芝導入は選手にどのような影響をもたらすのか。

  • 野球専用人工芝の開発

    西武プリンスドームは、2007年のシーズンオフに張り替えた人工芝の老朽化により、2015年12月から’16年3月までの期間で、毛足の短いショートパイル人工芝から新しい人工芝へと張り替えた。
    今回採用されたのは、ミズノ(株)と積水樹脂㈱が共同開発した、より天然芝に近い感覚でプレーできる野球専用人工芝「MS Craft Baseball Turf」(エムエス・クラフト・ベースボール・ターフ)。スポーツ用品でグローバルな実績を誇るミズノ㈱と各分野で独自の製品づくりを展開する積水樹脂(株)の素材開発力が結集された製品である。
    ミズノ(株)はスポーツ用品を扱うトップメーカーとしての強みを生かした、ミズノブランドアンバサダーとして契約を結ぶ選手へのヒアリングや、プロ野球フランチャイズ球場、施工施設および指定管理者として運営管理する施設からのヒアリングにより、現在プロ野球界で使用されている人工芝の課題を明らかにした。さまざまな問題点や課題を把握した同社は、それらを開発課題として捉え、野球専用人工芝の開発に着手した。

    ボールバウンド時の充填材の飛散を高速度カメラにより撮影。MS Craft BaseballTurfの圧倒的な飛散抑制力がわかる。

  • MS Craft Baseball Turf誕生

    バットやグラブなどのスポーツ用品を作り出す際に用いる技術を応用させ、芝葉の素材や形状、ボリュームなど人工芝のスポーツ性能を徹底的に分析した。選手が快適に、そして理想的なプレーを実現できるような最適な組み合わせはいったい何か。いくつもの検証を重ね、採用されたのが「MS WAVE TURF」(クリンプパイルを用いたスプリング構造のターフ)。野球使用における性能実現に向けて15項目以上の評価試験を実施し、5年の開発期間を費やして誕生したのが、野球専用プロスペック人工芝「MS Craft Baseball Turf」である。
    2013年より販売が開始された同製品は、JX等々力グラウンド(神奈川県川崎市)、大原運動公園野球場(新潟県南魚沼市)、亜細亜大学野球場(東京都日の出町)など、すでに約6万㎡の施工実績がある(フル規格野球場4球場および室内練習場)。プロ野球12球団の本拠地球場で採用されるのは埼玉西武ライオンズの西武プリンスドームが初めてのことである。

    導入時に芝葉を全方向にランダムに寝かせて表面を覆っているため、ボールの転がりが非常に安定する。そのため、より自然なプレー感覚となる。

MS CRAFT BASEBALL TURF 8つの大きな特徴

MS Craft BaseballTurfの敷設工事

ミズノ(株)が行った人工芝張替工事の様子を写真で振り返る。

  • 着工前の様子

    2015シーズンオフの12月より作業開始。2008年より使用してきた人工芝は、野球の試合のほか、コンサートのイベントを支えてきたため劣化が著しく、選手からも改善の声があがっていた。

  • 撤去作業と既存下地舗装

    下地舗装を傷めずにキレイに撤去。その後、舗装全面チェックを行い、大きな不陸は舗装を打ち換え、小さな不陸は樹脂モルタルにより修正を行った。最後に全面清掃を行い下地が完成!

  • 人工芝敷設

    施工手順を確立し、システマチックに行った。なかでも接着部分は入念に行い、作業完了後の再チェックも欠かさず行った。

  • 充填材散布・充填作業

    MS Craft Baseball Turfの重要な柱と言っても過言ではない、充填剤の散布作業。野球専用に配合された珪砂とゴムチップを散布量、順序、方向すべてを管理し、充填材の均一性を確保。完成まで自社のマシンにより入念に仕上げていく。

  • 最終チェック

    目視だけでなく、数値を測定できる試験機を用い最終チェック。試験データを計測することで、品質の安定度が可能に。経年での計測によりメンテナンスの指標としても役立つ。

  • 完成

    非常に高い施工技術と品質管理体制により、MS Craft Baseball Turfの敷設が完成。着工前と比べ、景観性にも優れた仕上がりになっている。

原点は“野球場”

天然芝に近い感覚で足・腰の負担軽減に期待

選手らの要望に応え、張り替え実施

西武プリンスドームはご存じの通り、野球のほか、コンサートや展示会などさまざまなイベントにも使用されている。

2007年のシーズンオフに張り替えた人工芝は、8年の月日が経過したことで、芝が踏み固められ、選手やスタッフから「芝生が硬くなり、打球が速くなった。試合前練習のメニューにランニングがあるが、選手の膝および足首に負担が増しているのではないか」という声もあがった。このような現場からの声が今回の張り替えの契機の1つとなった。

“野球場”としての使用感を優先

新人工芝に張り替えるため、球団では野球・コンサート・イベント・営業など各分野の担当者から要望をヒアリングし、必要な要件を洗い出して選定を開始した。担当者は「特に野球場としての使用感は重要なファクターであるため、サンプル確認も含めてチーム側とは密なコミュニケーションを図った。また、イニシャルおよびランニングを含めた全体のコストも、選定候補先はもちろん、グラウンド整備を担当している会社に協力を依頼し、要件を見える化し比較検討を行った」と話す。選定候補先には、“野球・コンサート・イベント・営業など多目的な利用を前提とした、野球に係るプレーの快適性、荷重への耐久性、お客様への安全性”を強く要望した。

この球団からの要望に応えたのが、ミズノ(株)の「MS Craft BaseballTurf」。品質と総コストなどの評価を踏まえた総合的判断が決め手となった。同製品はプロ野球本拠地では初の導入になるが、不安な点などはなかったのだろうか。担当者によると、ショートパイルからロングパイルになるため、メンテナンスがうまくいくのかという点に不安があったそうだ。しかし、ミズノ(株)がその教育に関して協力会社も含めて全面的に支援する体制を整備したことで不安材料が払しょくされたという。新人工芝に関するメンテナンス方法については、ミズノ(株)がグラウンド整備会社にOJTを含めたトレーニングや助言を適宜行うような体制が整えられている。整備会社はミズノ(株)の指導を受けながらメンテナンス技術を磨いていく。このようなことから球団側がミズノ(株)に全面的な信頼を寄せていることが伺える。

足・腰の負担軽減に期待

張り替えが完了した西武プリンスドームについて、担当者は「より、野球場らしくなった。今までと違って天然芝に近い感覚がある」と感じたそうだ。そして、選手の足・腰にかかる負担の軽減、ケガをしないことに期待を寄せる。新人工芝に変わったことで、彼らの負担や、ケガのリスクを減らすことは可能だろう。

2008年シーズン以来の王者奪還目指す

西武プリンスドームは、狭山丘陵の中にあるアウトドア感覚のドーム球場。1979年から西武ライオンズの本拠地球場として球史に残る名勝負を繰り広げてきた。’99年からは現在のドーム球場に姿を変え、2008年には人工芝の張り替えのほか、ソフトラバーフェンスの導入、球場内大型ビジョンの全面改修を行った。そして今回の野球専用人工芝導入。MS Craft BaseballTurfを味方につけた埼玉西武ライオンズは、「BEAST!強く、猛々しく。」のチームスローガンのもと、王座奪還を目指し、一丸となって今シーズンに挑む。

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  • 西武プリンスドーム人工芝張り替え工事 概要
    発注…西武鉄道株式会社
    施工…西武建設株式会社
    人工芝…ミズノ株式会社
    面積…1万2,061.56㎡
    工期…2015年12月~2016年3月

  • MS Craft BaseballTurfは、ミズノ(株)と積水樹脂(株)の共同開発商品です

    パイル素材:耐候性ポリエチレン
    パイル製法:特殊捲縮加工モノフィラメント
    標準色/芝丈:グリーン二色混織/65mm※
    厚み:280μ

    ※製品の芝葉には特殊加工を施しカールさせている。芝葉長さは、まっすぐに伸ばした状態のもの

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