ソフトテニス 小林幸司 選手

ソフトテニス:小林幸司選手

[ポジション] 前衛
[主な戦績]
2013年東アジア競技大会ダブルス金メダル、男子団体金メダル、全日本選手権大会 2回優勝、東京インドア全日本ソフトテニス大会 7連覇中、全日本インドアソフトテニス選手権大会 4連覇中など

野球 工藤公康

野球:工藤公康

野球・ピッチャー(現役当時)
[現役29年間の戦績] シーズンMVP2回、最優秀防御率4回、最高勝率4回など。
現役時代は妻の協力のもと食生活を一から見直し、長きに渡り活躍。

元プロ野球選手で現在は解説者として活躍する工藤公康さんが、現役アスリートをゲストに迎えてクロストークを繰り広げるMIZUNO ZONE LAB特集「工藤公康のプロフェッショナルtalKING」。第1回は、ソフトテニス全日本チームの一員、小林幸司選手(ミズノ)をゲストに迎えた。国内大会で無類の強さを発揮するだけでなく、2011年世界選手権のダブルスで準優勝するなど世界を目標に走り続ける小林選手の練習方法、強さの秘訣に迫った。 小林選手は、東京インドア全日本ソフトテニス大会を7連覇。全日本インドアソフトテニス選手権大会でも4連覇を飾るなど国内で常勝ペアとしての座を築き上げている。トップレベルの大会、何度も同じ対戦相手に勝ち続けるためのモチベーション作り、そして敗戦から立ち直るきっかけについて工藤さんが話を聞いた。

「勝ち続ける準備」

<工藤>
国内では敵なしという印象の成績ですが、勝ち続ける秘訣は?

<小林>
僕たちの目標は、日本代表として世界一になること。そのためには、消化試合でもどんな相手でも負けていられません。以前は試合によっては負けても良いと心に隙のようなものがありましたが、高校時代ある方に「(トップ選手としての)プライドを持ちなさい」と言われました。それから練習環境を提供してくれる、協力してくれる人のためにも勝たなければと思うようになりました。

<工藤>
ミスをしたとき、負けたときの考え方は?僕は、失敗や敗戦に成長のきっかけがあると考えられる人が強くなっていくと思っています。

<小林>
僕は結構、気持ちがネガティブになりやすいタイプですが、最近はどんなプレーの後でも「次の1本を必ず取る」という気持ちが大事だと気付けるようになりました。良い意味で頭の中から(ミスしたことを)捨てられるようになって、苦しい場面が少なくなりました。工藤さんは長年エースとして活躍されましたが、負ける怖さなどは感じませんでしたか。

<工藤>
怖さはなかったですね。負けることは一切考えませんでした。自信を持って投球するために、たとえば普段の練習で投げ込みがあと5本残っているというときに「もういいか」と思わずに、きっちりとやりきることを大切にしていました。それから、練習をやり切ったら、周囲から生意気に見えるぐらい自信を持って投げました。チームメイトが移籍して対戦相手になったときに「素顔は違うよ」と言われて、相手チームになめられることがないように、マウンド上だけでなく野球をやっているときは常に虚勢を張っていました。

工藤さんが対談に際して興味を抱いたのは、野球のようなチームスポーツとは違う、個人やペアといった味方の少ない種目ならではの苦労。小林選手が、ダブルスのペアとのコミュニケーション方法について語った。

「コミュニケーションの大切さ」

<工藤>
ペアを組むパートナーとは、どのようにコミュニケーションを図っていますか?

<小林>
最初は相手が1学年上で言いにくいところもありましたので、言いたいことはオブラートに包むように伝え方に気をつけるようにしていました。また一緒にご飯を食べに行くなどしてコートの外でも意思の疎通を図りました。もともと互いにどうやってプレーしているのかを知りたがりますし、相手が変なプライドを持たずに聞いてくれる人だったので、ペアとして成長できたのだと思います。それと、僕は落ち込みやすいタイプですが「ペアでは早く立ち直れる可能性が2倍になる」と心強くも思います。ただ顔を見ただけで調子が分かる状況になるまでは3年ほどかかりました。ペアというところは、野球のバッテリーの関係と似ていませんか?

<工藤>
そうですね。投手も捕手のサインの出し方で考えていることが分かります。同じサインでも、捕手が自信を持って出している時はサインの指に力強さがありますけど、反対に自信がなさそうな時は何度も出し直すというように出し方が違いますからね。ところで、野球はチームスポーツですが、テニスはダブルスでも2人ですよね。味方が少ないわけですから、周囲の方に応援してもらうことも大事になのではないですか?

<小林>
僕は、まず社会人としてやるべきことをやっていないと、周りの人に見てもらえるような選手としての自信を持てません。だから、仕事もしっかりとやります。仕事を一生懸命にやると激励や観戦をしてくれる人が増えます。相手の応援が多いときは、プレッシャーや雰囲気に負けてしまうと思いますので、そういう意味でも周囲との関係性はとても大切だと思います。

<工藤>
感謝の気持ちは大切ですね。僕が若いときは少し上から目線で「みんな、見に来いよー!」なんていう感じでしたから(苦笑)。僕も年齢を重ねてからはファンサービスなどで感謝の気持ちを示すようにしました。

小林選手が近年、特に注力しているのが体幹トレーニングだという。20年以上も前に当時の最新トレーニングを取り入れていた工藤さんも驚く強化ぶりと、その効果について小林選手が語った。また、工藤さんは現在、大学で学んでいるという2種類の身体移動法を紹介した。

「体幹トレーニングの考え方と効果」

<工藤>
体幹トレーニングについて、興味を持ったきっかけと具体的な鍛錬方法を教えて下さい。

<小林>
2年ほど前の全日本チームの練習で教えてもらったのがきっかけです。当時は「足から得た力をいかに打点に伝えるかが大事」という考え方を持っていなかったので、新鮮でした。今は、毎月行われる全日本の合宿で課されたメニューを週に3~4回ほどやっています。ひじの先を床に付けて姿勢を固定するメニュー(動画上参照)は、5分間。疲れて途中で腕を回す動きも開始から3分間は禁止です。2年前は1分で全員が無理だと言うくらい辛いものでしたが、1分が3セットになり、3分になり…。不思議ですが、やり続けるとできるようになりました。

<工藤>
5分間は、すごい! 現役プロ野球選手でも3分もできません。成果はいかがですか。できないと思っていたことをできると、前向きな気持ちになりませんか?

<小林>
すごくなります。そしてプレーにも結果がでました。とにかく、ショットの正確性が変わりました。全力で動いても体幹(腹筋、背筋)が安定するので頭や目が動かない、姿勢が崩れないという感覚です。以前は打点を見て打っていましたが、上体を起こして打つことができるようになり、視野が相手コートまで開けてストレートのコースが見えるようにもなりました。全力で動いて打ちたいところに打てる。一番楽しさを感じる瞬間です。

<工藤>
スピードを出してもブレないんですね。体幹、股関節を鍛えると安定感が変わります。僕も20年以上前にアウフバウ(ドイツ語で段階的の意味)トレーニングをしていました。前傾姿勢になると腰に負担がかかるので、寝て足をひねるなど骨盤を安定させる運動をやりました。また最近は大学で様々なトレーニング法を学んでいます。素早く動き出すための方法には「基本法」と「重力法」という2種類があるという話(動画下参照)などが面白いです。

また、試合前に相手の情報を得る方法を紹介した。一方、エース投手として長年活躍した工藤さんは「駆け引きがあるから、3球ど真ん中で三振を取れることもある」と言い、具体的な心理戦を解説した。

「駆け引き」

<工藤>
駆け引きは、どんな工夫をしていますか。相手の表情を見て判断するのでしょうか?

<小林>
短期決戦の7ゲーム制は勢いで勝つ場合もあるのですが、長丁場の9ゲーム制では、最初の3ゲームで様子を見ます。経験上、この3ゲームで相手の状態を知り、対策を立てないと負けてしまいます。それと、野球でも選手によってバットの形状が違うと思いますが、相手のラケットや握り方を試合前に見て、得意なプレーを想定します。軽量タイプは取り回しやすいですし、先に重心があるラケットはパワーボールが打ちやすいという特徴があるので、相手選手がやりたいプレーが分かります。メーカーであるミズノに入社してからは他社製品の研究もしているので、その知識を活かしています。ただ、意外と見た目で買ってしまう高校生には通用しません(笑)。工藤さんは、シーズン中、同じ相手と何度も対戦されていたかと思いますが、そのときはどうされていましたか。

<工藤>
僕は、相手バッターの腰の開き方などで狙い球を判断しました。腰が早めに開くときはインサイド狙い、逆に遅いときはアウトコース狙いという具合です。そして、相手の読みに応じて相手を困らせるように配球を考えていました。たとえば、インサイド狙いの相手に対してアウトサイドを攻めて2ストライク。相手が次はボール球を挟んでくるだろうと思ったところで、相手が狙っているはずのインサイドに投げるとか。一番調子が良いときは、ネクストバッターズサークルにいる選手が僕の投球に合わせて、どんなタイミングで振っているのかも見えました。少し遅れて振ったら変化球狙いだなとかね。初対戦のときは、一番練習するストレートで勝負。でも、2回続けて打たれたら、3回目は変化球かな(笑)。

小林選手は、世界一を目標に日本のトップを走り続けている。厳しい体幹トレーニングを着実にこなし、成果を出している点は、強さの一部に過ぎない。工藤さんとの対談を通じ、気を使うコミュニケーションなど面倒に感じることにも嫌がらずに取り組み、強いプライドと意欲を持って練習に励む小林選手の姿が浮かび上がった。