スペシャリストが語る「選手の強さの秘密」

陸上シューズの硬さが走りの途中で変化!秘密はカーボン技術にあり!

飯塚翔太選手着用スパイク

このスパイクは日本短距離界を牽引する飯塚翔太選手と共同開発した短距離選手用陸上スパイクのトップモデルです。選手が採用する「フラット接地走法」は、足裏全体でより多くの地面反力を利用しながら効率的に走る走法です。「忍者走り」と呼ばれていたこともありました。
フラット接地走法の速さを支えるのは、地面からの反発力をスピードに変えるソールの硬さ。このスパイクでは、ソールを硬くするプレート素材として、新たにカーボンシートをソール裏に挿入しています。従来、プレート素材としては適さないとされてきました。なぜなら硬すぎて柔軟性が著しく損なわれてしまい、スタート時や加速時に大きなロスが発生してしまうからです。
しかし、ミズノは長年蓄積してきたカーボン加工技術を駆使してその問題を解決しました。その解決方法とは、カーボン強化繊維を編んでシートを作る際、縦と横で編み方のテンションを変え、縦方向には硬く、横方向には柔らかいカーボンシートを新開発したのです。これをソール裏に挿入することで、スタート時には柔らかい感触でスムーズな加速ができ、中間時の高速走行ではシューズの硬さを生かして地面からの反発力をスピードに変えることができるようになったのです。

「このスパイクを履いて走ると、スタート時には柔らかいシューズが、走り出すと硬くなる感覚になると思います。シューズが選手の意のままに変化する感覚ですね」と益子。

データと感覚の融合が、納得の一足を生む!

現在、ミズノのシューズ開発は、走行時における動作解析や足圧測定の分析といった科学的なデータをもとに開発を行っています。
しかし、タイム的には速く走れていても選手はそう感じなかったり、逆にタイムは良くないのに、選手は速くなったと感じる時もあります。ケガをするような違和感なのか、未体験の速さという新感覚か…この見極めが非常に難しかったと言います。常に、データと感覚のバランスを取りながら開発を進めていたそうです。

また、飯塚選手にとっては、このシューズ開発は自分自身の競技用シューズを生み出す作業でもありました。彼自身、日頃からミズノの企画スタッフと、時にはシューズ製作担当の鈴木クラフトマンともコミュニケーションを重ねました。

「その選手がどんな靴が一番良いかは、走っているところを見ればわかる」とベテランクラフトマンの鈴木。その鈴木が選手の走りを見て製作したシューズは、これまで選手のシューズには使わなかったカーボンシートをソール裏の前足部分全面に挿入しました。
シューズのアッパーも小さくして、フィット感を高めました。しかも、片方150gが約130gに軽量化。一気に20gもの軽量化に「素足感覚で走っているような軽さ」と共同開発に参画した選手も驚いていたそうです。

「『飛行機に乗る時、貴重品とシューズだけは絶対に機内持ち込みする』という有名陸上選手がいたほど、陸上選手は昔からシューズにこだわりを持つ選手が多かったです。
陸上選手はシューズを履いて出した結果で人生が変わります。シューズづくりに関わる仕事は、選手の人生を左右する仕事だと心に刻み、どんな選手のシューズも全力で妥協なく作り上げています。」

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