グラブ編

スラッガーとしてのイメージが強い松井選手であるが、守備においても外野手として日本時代の2000年から2002年まで3年連続でゴールデングラブ賞を獲得するなどの活躍を見せたのである。

名人と称された前任者から受け継ぎ、2003年アメリカに渡ってからの松井選手のグラブづくり担当したミズノグラブマイスター岸本耕作の解説をもとに紹介。

岸本耕作
制作エピソード

松井選手のグラブはプロ入団当初から基本的な型は変わることはありませんでした。それは高校時代の守備位置であったサード用グラブをベースに全長を10mm大きくした(全長32cm)モデルを使用されていました。このモデルをアメリカに行くにあたり、打球の速さ、フィールドの大きさに対応するために、指の部分のみ10mm(全長33cm)長くする改良をしました。他の基本スペックは次の通りです。

・重量580~600g
・捕球面の革厚2.1mm
・ウェブはオーソドックスなクロスウェブ

※捕球面の革厚を薄くすることで、フィット感、フレックス感が良くなり、さらに軽くなるので操作性が高くなります。しかし耐久性がかなり落ちるため一般品では、この仕様には対応していません。

さらに松井選手がグラブに対して求めたことは、次のようなことでした。

・親指と小指がしっかりと固いこと
・小指掛けの位置
・指袋のフィット感

こららは、捕球時に「強い打球に負けない」「しっかりと掴みたい」との考えからでした。

※ミズノの手がけるプロ選手グラブの中で最も固かった。素材である皮自体は柔らかく、厚みも普通(親指3mm、小指2mm)であったが、中に詰めるフェルト(繊維素材)やショーレックス(樹脂製補強パーツ)は硬いものを使っていた。

岸本耕作

松井選手とのグラブづくりは毎シーズン終了直後に打ち合わせを行いました。その際、細かなことはおっしゃられませんでした。その後、出来上がったグラブをチェックしていただくのですが、グラブを手にはめて確かめられている松井さんの表情を注視していました。というのは、グラブに求められるのは明確なスペックで確認できるものでなく、「もう少し硬く」というふうに感覚的な部分が多いので、グラブをはめて感触を確かめているときにその良し悪しが表情に表われるのでした。さらにキャッチボールなどで確認していただいた後、修正をいたしました。こうしてキャンプ前に2個、シーズン中に不都合があれば1、2個納品いたしました。その中で練習用からゲーム用へと昇格するグラブが年に1個あるのが理想ですが、現実的には難しかったです。素材を吟味して、数をたくさん作り試行錯誤したのですが、行き詰まった時にはミズノ社員が力を合わせ、ブレずにモノづくりをすることを心がけ、松井選手に満足してもらうように努力しました。こうしてできた最後のグラブを、国民栄誉賞受賞式の始球式で使っていただいたことは、大変感慨深いことです。

基本的に型の変更は少ないなか、松井選手の好みであるブラウンのほか、所属球団のテーマカラーをベースにカラー提案をしました。

2003年/2004年 使用グラブ

2003年使用グラブ

・カラー:ブラック+コルクの表革パイピング
・ウェブはクロス55M(ミズノ提案による松井選手オリジナル)

2004年使用グラブ
愛称ゴジラの尻尾をモチーフにデザイン

2005年/2006年 使用グラブ

2005-2006使用グラブ

・カラー:コルク

2007年-2009年 使用グラブ

2007-2009使用グラブ

・カラー:Dブルー

2010年 使用グラブ

2010使用グラブ

・カラー:ローズブラウン

2011年 使用グラブ

2011使用グラブ

・ カラー:グリーンブラック
・ よりしっかりとボールを掴むために改良
・ 全長を10mm短くした(32cm日本時代のサイズ)
・ 間口を狭くした
・ 指掛けの位置を深くした(指入れが深くなる)

2012年 使用グラブ

2012使用グラブ

・カラー:ブラック+金茶ステッチ

松井秀喜 使用用具のこだわり&全スペック ミズノクラフトマンの証言