ラグビー・田中史朗インタビュー /小さな体が武器になる(後編)

日本ラグビー界を背負って立つ田中史朗(パナソニック)。小さな体で海外の猛者を翻弄する秘密について、前編では探った。後編ではそんな田中にとってのZONE、そしてそれを生かしてチームの勝利をつかむ方法について聞いた。

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集中力が最高潮に到達したときにたどり着くZONE

田中がZONEを感じたのは、つい最近の出来事。2013年12月14日のサントリー・サンゴリアス戦でのことだった。

「そのときチームが連敗続きだったので、どうしても勝ちたかったんですね。それだけ気持ちも高まっていました。その試合で、どんな相手が来ても怖くないというか、自分が優位に立てているような気持ちで試合に出場することができたんです」

体格の大きい相手にもためらうことなくタックルし、夢中になってパスを回した。そんなプレーを繰り返す内に、自然とZONEがやってきた。

「よく集中できていて、疲労を感じない時間がありました。パスを通すにも、どこが開いているのかわかりやすくなっていて。でもその状態がずっと継続しているわけじゃなく、本当に何分間かそういう状態があったような感じでした。自分がどんなプレーをしたのか、あまり記憶がなかったりするんです」

スタンドオフの声だけが聞こえた

記憶すらもないハイな精神状態。それでも頭の一部は冷静なのが、田中ならではのZONE体験だ。

「いつもなら観客の声なども聞こえるんですが、この日は本当に必要な声だけが入ってくる感じでした。チームメイトの10番・スタンドオフの選手の声だけが耳に入ってきて、プラスアルファとして自分の判断もできるような状態だったんです」

この日のプレーは、田中にとって理想的な状態だった。しかし、本人はそのメカニズムを分析することができなかった。

「普段とどこが違っていたか? たぶん、気持ちの問題だと思うんですが、あまりよくわかりませんね」

集中力だけでは足りない何か。ZONEに入るための努力は、これからも続いていく。

仲間のZONEを感じる

自分がZONEに入っていなくても、チームの勝利のためには、できることはやらなければならない。田中にとって、その1つが味方のZONEを感じることだ。

「タックルを例に挙げると、1人の選手がそういう状態にあって、思い切りよくヒットしている様子がわかるとします。そういう時は、自分のところで抜かれてしまっては(1人の選手が頑張っている)意味がないんですよね」

そうやって周囲の変化を感じるためには、普段からコミュニケーションを取って味方を知る努力が必要になる。

「怪物と呼ばれるような選手が出て来ても、最終的にはチームプレーの優れた対戦相手に負けてしまうシーンが何度もあった。全員のラグビー観を一緒にする必要がある。スーパーラグビーではキャンプ中に、6時間くらい1つの部屋で共同生活をして帰ってくるというメニューがあります。そこでお互いを知ることもできる良い機会になりました。日本代表でも、このようなチームメイトとのコミュニケーションを深める時間を作っていきたいですね」

自らを高め、味方の能力を引き出すスクラムハーフ。それが田中の理想像だ。日本を引っ張る小兵は、チームとして成功することを第一に考え、挑戦を続けていく。

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