ラグビー・田中史朗インタビュー / 小さい体が武器になる(前編)

2013年、世界最高峰のリーグ・スーパーラグビーのピッチに日本人選手として初めて立ったスクラムハーフ・田中史朗(パナソニック)。国内ではパナソニック・ワイルドナイツのプレーヤーとしてトップリーグに出場する田中は、日本のラグビー界を背負って立つスーパースターだ。そんな田中のラグビー人生、そして"ZONE"について話を聞いた。

諸刃の剣となった小さな体

スーパーラグビーのピッチに立ち、世界最高峰のラグビーを体感した田中には、改めて実感した自身の武器があるという。それは身長166センチというラグビー選手としては低い身長だ。

「僕は小さいので、簡単につぶせると思ってプレッシャーをかけてくるプレーヤーが多くいます。ところが、相手が寄ってきたことで外側にはスペースが生まれます。そのスペースに味方を走り込ませることができるのは、自分の強みになりましたね」

しかしその武器は、巨漢がそろうグラウンド上では弱点にもなる諸刃の剣だ。

「ディフェンス時にはやはり体の小ささは、弱みになります。相手は僕を潰すことができると思ってアタックをしかけてきて、それを跳ね返すことができず、せっかく生まれたスペースを活かせずに悔しい思いをしたシーンが何度もありました」

低い身長は自身の長所であり、短所でもある。それを活かして戦うために、田中は誰よりも考えるラグビー選手となった。

自分の武器を輝かせるために

ラグビーの本場で田中は、周囲の助けを最大限に生かす術を覚えた。

「(所属する)ハイランダーズでは、自分がボールを持つと相手が寄ってくることをチームメイトに伝えているので、僕のそばにいれば(スペースが生まれて、次にパスが来て)自分が抜いていくことができるという意識を持ってもらえている。そういう意味では良いサポートを受けられています」

それは、同じポジションでスターティングメンバーの座を争う、ニュージーランド代表選手との違いにもなった。

「僕の上にはレギュラーとして出場しているニュージーランド代表のスクラムハーフがいますが、彼は個人能力が高いので、味方のサポートがない状況でも自分1人で相手を抜いていくことができてしまいます。その分、僕が試合に出ているときは、周りの味方選手も『自分の見せ場だ』と感じてサポートしてもらえるんですよ。そういう共通認識がチームメートとありましたね」

そんな海外で得た経験は、国内での田中のプレースタイルも変えた。

「自分がおとりになることだけでなく、国内では自分で抜いていくスペースを見つけるように心がけています。日本のラグビーのほうがスピード感があると感じていますので、そこで相手を抜くことができれば、スーパーラグビーでも活きてくると思うんです。世界でレギュラーを取るためには、おとりになって相手のスペースを突くことだけでは難しいですから」

国内と海外。2つのリーグを巧みに使いわけ、田中は自身の武器を増やしている。

田中を大きく変えた高校2年時の敗戦

そんな田中が考えるラガーマンとなったのは高校2年生の時だ。下級生ながらレギュラーを勝ち取ったものの、自身のミスでチームは地方大会で敗退。全国大会にも出られず、周囲からも責められ、レベルアップの必要性を田中は強く自覚した。

「どうすれば試合に勝てるのか、自分自身に問いかけました。以来、試合後にビデオを見て自身のプレーを分析し、次に活かすようになったんです。この経験があったからこそ、ラグビーを深く理解し、好きになることができました」

プレーを何度も確認し、深く追求することで、自分自身のプレーを高めていく。その積み重ねで、世界最高峰の舞台へたどり着くことができた。

そんな田中が次に目指すのは、日本ラグビーを世界中に知らしめることだ。

「(スーパーリーグ)2年目は、半分以上の試合に出場して先発のスクラムハーフは日本人なんだと思わせたいですね。難しいかもしれませんが、それができれば世界も、日本に目を向けてくれると思うんです。日本人でもできるということを世界に知らしめることは、今ラグビーをする日本人の子どもたちの未来ためにも繋がる道ができると思っています」

熱い思いを胸に世界で戦う田中。後編では、そんな田中のZONEを探る。

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