陸上やり投げ・ディーン元気インタビュー / 新たな環境で、世界の頂点をつかむ

陸上界の注目株・ディーン元気は今春からミズノに入社し、さらなる高みへと挑戦する。ZONE状態に突入することでつかんだ世界への切符、そして感じた自分の足りない部分。新しい環境で目指すのは、大舞台の表彰台、そして大記録の更新だ。

大投てきを実現させたZONE状態

ディーン元気がその名を轟かせたのは、2012年4月の織田幹雄記念国際大会のことだ。当時、大学3年生だったディーンは、日本歴代2位となる84m28という大記録をマーク。同年6月にも日本選手権で84m03という好結果を残し、ロンドンオリンピック代表の座をつかんだ。

このときの感覚を、ディーンは次のように語った。

「リラックスした中にも適度な緊張感があり、細かな動作一つひとつに対してきっちり自己評価と集中ができていました。鮮明に感覚と景色が残っていて、言い方を変えれば第三者の視点で見ているような感覚でした。」

己を見つめ、自信を持って臨んだ舞台でしっかりと結果を残す。当時20歳のディーンは、まるでベテランのような落ち着きで試合に向き合っていた。

自己ベストをマークした織田記念の投てきを「練習でやっていたことを試合でも再現することができた。力まずにリラックスして投げることができた」と振り返るディーン。試合へ向かう心境や準備も含めて、今でも理想の投てきの1つだという。

世界の舞台で感じた差

ロンドンオリンピックでは決勝に進出したものの10位にとどまり、翌2013年の世界陸上モスクワ大会は惜しくも代表落選。「僕自身はまだまだ未熟な点が多い」と世界の舞台では、自らの弱点を感じることにもなった。

現在はさらなる飛躍のため、バランスのとれた安定した肉体に取り組んでいる。主にきたえているのは、体幹と肩周り。ケガを防ぐと同時に、パフォーマンスの向上にもつなげる意図がある。「基本的には(やり投げの本場である)フィンランドで行われているメニューを、自分が鍛えたい部位に合わせて少しアレンジしている」と微調整をしながら、自分の体と向き合っている。昨年10月には十種競技に挑戦するなど、可能性を広げるためにさまざまな練習方法を模索中だ。

2020年東京オリンピック開催決定も、ディーンにとっては大きなモチベーションとなっている。

「一番の目標は東京オリンピックでの金メダルです。それに向けて、ケガをしない体づくりを最重点に置いて次のリオデジャネイロオリンピックでメダルを必ず取るという目標でやっていきたい」

年齢的にも最も脂が乗った時期に迎える自国開催の晴れ舞台に、今から気持ちを高ぶらせている様子。そのための礎を、今から築き上げているようだ。

最高の協力者たちと目指す大記録への挑戦

今春からミズノに入社し、トレーニングの拠点を中京大学に移す。ディーンにとっては追い風となる決断だ。

最大のプラスとなるのが、大学時代からの恩師・田内コーチの存在だ。

中京大学でコーチを務める田内氏とは、大学時代も指導を受けていた間柄。ただ、距離の関係で指導を受ける機会も限られ「何かと苦労した」と歯がゆさも感じていた。それが今後は身近でコーチングを受けることが可能になり、「何より楽しみにしています」と本人も笑みを浮かべる。

さらに投てき界の大先輩・室伏広治と練習場所が一緒になる。これまでも一緒にトレーニングしてきたが、頂点を目指すディーンにとってオリンピック金メダリストと日常的に触れ合う環境は、間違いなく好影響を与えるはずだ。

やり投げの日本記録は1989年に樹立された87m60。20年以上も破られない大記録だが、ディーンは「自分が思い描く成長ができれば必ず越えられる数字です。いつまで、という意識はありませんが2020年にピークを合わせて確実に越えたいです」と意気込む。最高の環境を得た若武者は、世界の舞台で輝くために日夜努力を続けていく。