高齢者のための履くインソール

■歩行名人の特長を教えてください。

歩行名人は、高齢者の方々が日常生活で履くために生まれた「気軽に履けるインソール」です。インソールの重要性は徐々に浸透しつつありますが、インソールは特定の靴を履くときに使用するもので、サンダルやブーツ、ビジネスシューズやスニーカーでは使用するチャンスが少ないのが現状です。高齢者の方々にお話をうかがっても、ウォーキングシューズなど特定の目的に応じた靴のみでインソールを使用していて、日常的に履くシューズでは必要ないという声が多く聞かれました。
そこで私達は、日々の生活での買い物や散歩はもちろん、家の中でも正しい歩行に導くことのできるインソールがあればもっと快活な生活が送れるのではと考え、室内外を問わず履けるソックスにインソールの機能を組みこんだ歩行名人を開発しました。

■「正しい歩行に導く」とは、どのような状態ですか?

ひとつは、無理なく歩けるということです。高齢者の中には、膝の内側に荷重がかかることが原因で起こるトラブルや、加齢に伴って足裏のアーチが低くなるトラブルを抱えてしまう方が多いのですが、どちらも歩き方自体を変えないと足裏から膝、骨盤、肩、首に至るまで身体全体のバランスが崩れ、不調をきたしてしまいます。そこで、普段の生活で常に足裏を支えてあげることで、様々なトラブルの対策につながると考えました。

編み方で厚みを変えたサポート機能

■裏の生地の凹凸には、どのような機能があるのでしょうか?

歩行名人の足裏の生地は、糸の編み方だけで凹凸を作り出しています。かかとの一部のやや外側に厚みを持たせることで、膝の内側に重心がかかるように促し、さらに土踏まずの部分にも厚みを持たせることで足裏のアーチを補助する機能があります。編み方による具体的な厚みの違いは、写真1をご覧ください。赤い箇所が厚く、黄色い箇所が薄く編んでいる部分です。今までの機能付きソックスは、足底のポケットにスポンジを入れてサポート機能を加えていましたが、違和感があったり、変形したりと課題が多くありました。そこで歩行名人では、足と歩きのスペシャリストである入谷誠先生にご協力いただき「多くの人にフィットし、不快感なく正しい歩きに導いてくれる形状」を追求しました。 開発過程で、セーターの編み方の技術を活用すれば糸と編み方だけで凹凸を作り出せることがわかり、より自然な形状でサポート機能を持たせることに成功しました。これなら通気性も吸汗性も高く、洗濯するだけで何度でも履くことができ、心地よい柔らかさと衝撃吸収も保持できます。

■「足の甲」の側にも機能がついていますね。

インソールは足裏のサポートに限られますが、ソックスと一体化させることで足裏だけでなく足の甲も含めて足全体にサポート機能を持たせることができました。土踏まずの部分(※写真2)は、甲をぐるっと一周するように糸のテンションを上げ、しっかりとフィットするように設計しています。ただし、ショパール関節・リスフラン関節と呼ばれる「土踏まずにある関節ライン」については、圧迫すると窮屈感があるため、生地のテンションを低くしています。全体的に糸のテンションを上げると履きにくさがありますが、甲の部分のみなら誰でもスムーズに着脱が可能です。

高齢者の快活な暮らしを追求

■開発への想いを教えてください。

私達ライフイノベーション研究開発課は、スポーツ製品の枠にとらわれず、高齢者の方々や子ども達、広くは一般生活者のために新しく魅力ある製品をつくることが役割です。私は主にサポーターを手がけていますが、ウエアでも器具でも実現したい製品次第で何でもつくります。前モデルがない製品を手がけるのは、新境地ならではの苦労も数多くありますが、今まで世になかったものをゼロから形にしていくことにやりがいを感じます。今後の目標は、高齢者の方々により快活な生活を楽しんでいただくために、サポーターやベルトをつけることでつけない状態よりも動きがよくなる、全く新しいサポーターを生み出したいと思っています。